【ライトノベル最新動向】エピソード一段落の『薬屋のひとりごと』『わたしの幸せな結婚』新刊がランキング上位に

 こちらはシリーズ完結となった伏見つかさ『エロマンガ先生(13) エロマンガフェスティバル』(電撃文庫)。高校生でライトノベル作家の和泉マサムネの義妹が、担当してもらっていたイラストレーターのエロマンガ先生だったと分かったところから始まるシリーズ。兄妹として触れあい、クリエイター同士として尊敬しあい、そして恋愛感情を持つ少年少女として意識しあう2人の関係を描いてきた。

 ライトノベル作家でいずれも美少女の山田エルフや千寿ムラマサからモテるマサムネに、ライトノベル作家は素晴らしい職業かもと思った人もいるかもしれない。そんなうらやましい環境にあっても、やっぱりエロマンガ先生こと紗霧のことが大切な兄が、いろいろと決着を付けていくというストーリー。紗霧はひきこもり生活から完全に脱することができるのか。2人が手掛けた作品のアニメの評判は。読んで結末の感慨に浸ろう。

 ランキングでは、1位に発売を9月30日に控えた伏瀬『転生したらスライムだった件 20 箔押しポストカードセット付き特装版』(GCノベルズ)、6位に同じ『転スラ 20』の通常版が入って前評判の高さを見せている。『転スラ』といえば映画映画『劇場版 転スラ 紅蓮の絆編』が11月25日に公開となる予定。原作者の伏瀬がストーリー原案を手掛けていて、いつものメンツによるいつもととは違った活躍を楽しめそうだ。

  映画化といえば、7月29日に三木孝浩監督で公開となった映画の原作で、一条岬による『今夜、世界からこの恋が消えても』(メディアワークス文庫)が4位、そのスピンオフ作品となる『今夜、世界からこの涙が消えても』(メディアワークス文庫)が5位に入ってメディアミックスの効果をめいっぱい見せている。なにわ男子の道枝駿佑と東宝シンデレラの福本莉子がW主演した映画は、とにかく泣けると評判になっているようで、舞台挨拶では道枝がバケツを手に持つ場面もあったとか。

 泣けるポイントはいろいろあるが、主人公たちを友人としてみつめる綿矢泉という女子の強さと一途さに感化されるところも1、2を争う号泣ポイント。スピンオフの『今夜、世界からこの涙が消えても』は、泉の視点から主人公たちの日々を追いつつ、その後の泉がどうなったかを描いていて泉ファンにはたまらない。映画では古川琴音が抜群の演技を見せていたキャラクターで、映画を見た人には実体を伴ってシーンが浮かんでくることだろう。

 気になる作品を1冊。34位の美月りん『意地悪な母と姉に売られた私、何故か若頭に溺愛されています』(富士見L文庫)は、薄幸の女性がどん底から幸せをつかむシンデレラストーリーとして、『わたしの幸せな結婚』に続くものになりそう。ホストに入れ込む姉が作った借金の代わりに、暴力団に差し出された菫という女性が見せた表情が、桐矢という若頭の心を刺激したようで、菫は家で家政婦をするように命じられる。家庭に恵まれなかった2人が心を埋め合い近づいていく展開に、キュンキュンできる作品だ。

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