OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
OKAMOTO’Sオカモトショウが推すSF漫画『バビロンまでは何光年?』 壮大で不条理な魅力を語る
――全宇宙の記録を閲覧できるマンガ喫茶も出てきました。
そうそう(笑)。かと思えば、かなりシリアスなエピソードもあって。ロイクマという惑星に行くと、主人公たちの3百分の1サイズの人たちが住んでるんです。気付かないうちにどんどん踏み潰しちゃうし、普通に走ってるだけで数万人のロイクマ人が胃袋になかに入ってきて、お腹がいっぱいになったり。それでも「大切な観光客のためなら 彼らは死をもいとわないんだ」って。
――軽妙なタッチで描かれてるから笑ってしまうけれど、よく考えると笑えないですね……。
命の重さとは、みたいな話ですからね。吾妻ひでおにも通じるナンセンスさというか、ギャグの温度感が似てるんですよ。昔ながらのギャグマンガの血筋があるのも、この作品の魅力だと思います。最後の最後で『バビロンまでは何光年?』というタイトルを回収するんですけど、その描き方も素晴らしくて。どんでん返しではなくて、すごくきれいなオチなんです。ラストの一コマだけでも、このマンガを読む価値があると思いますね。
――確かに。本当に濃密な作品ですよね。
しかも読んでいるときの手触りは軽やかなんですよね。単行本1冊で完結するんだけど、長編で描くべき内容が凝縮されていて。どんどん展開するし、細かいネタもすごいし、本当にいいマンガだと思います。マンガ好きでも知らないかもしれないので、「まだ読んでない? すごくいいよ」って言えるかも(笑)。
――(笑)。ショウさん、本当にSF愛が強いですね。
そうですね(笑)。これは自分の解釈ですけど、「バビロンまでは何光年?」は、テッド·チャンの短編集「息吹」に近い感じがするんですよ。美しくて情緒がある、古き良きSFの流れがあるというか。興味がある方はぜひ読んでみてください。
『バビロンまでは何光年?』を読みながら聴きたい!
『WARP』JUDY AND MARY(2001年)
「90年代の音楽シーンを牽引した“ジュディマリ”のラストアルバム。当時のYUKIさんのキュートでチャーミングで尖ってる感じもそうだし、歌詞がちょっとナンセンスでぶっ飛んでるところも、“バビロン~”のイメージに近いかなと。アルバムの始まりかたもSFっぽいんですよ。オルタナやクラブミュージックを飲み込んでロックバンドとして成立しているサウンドも最高です」