世界、スポーツやろうぜーー『ハイキュー!!』特別番外編が伝えた願い 競技を支える側に回った元選手の思いを読む

 4月25日発売の「週刊少年ジャンプ」21・22合併号に、古舘春一『ハイキュー!!』の特別番外編が掲載された。

 『ハイキュー!!』は高校バレーを舞台とした作品で、2012年から2020年まで連載された。今年は連載スタートから10周年を記念してさまざま企画が進行している。

 今回、主人公となるのは黒尾鉄朗。日向翔陽、影山飛雄を擁する烏野高校の良きライバルである音駒高校の主将で、本編では共に合宿で切磋琢磨したり、烏野のブロッカー・月島蛍を開眼させた人物である。春高(全日本バレーボール高等学校選手権大会)でも、烏野と音駒の対戦はファンの記憶にも強く残っているばずだ。

 本編の最終回直前、そんな黒尾が日本バレーボール協会競技普及事業部に所属していることが明らかにされた。今回は黒尾が「国・所属チームの垣根を超えたスペシャルマッチ」実現のため、高校時代に共に戦い、今は世界のトッププレイヤーとなった「妖怪(モンスター)」たちに会いに行く……というストーリーだ。

“人気”選手たちが勢ぞろい

 『ハイキュー!!』の主要キャラクター=現在の世界のトッププレイヤーたち、というのがファンにとっては既に胸アツなのだが、限られたページ数、コマ数ながら、きっちりとそれぞれの個性が描かれている。

 そもそも、黒尾のスペシャルマッチ出場への口説き方が秀逸だ。

 影山の先輩でライバルのセッター・及川徹には「世界のスター及川選手のセットで一層高く飛ぶ日向選手が見たいなあ…!!」と言い、プライドをくすぐる。パワフルなスパイカーで、日向たちとも激戦を展開した牛島若利には「及川選手と日向選手同時に倒すチャンスは今回だけかと」と高校時代からのライバルの存在を示唆。そして、バレー馬鹿な影山には優れた選手がチームメイトにいること、もうひとりのバレー馬鹿の日向には強い相手とのバレーの試合の機会を作ったこと自体に感謝される。黒尾がそれぞれのキャラクターを把握しているからこそできることである(それが『ハイキュー!!』ファンにはたまらない)。

 もちろん、すでに現役を退き、選手ではないキャラクターたちも登場している。コマのあちこちに懐かしいキャラたちの“今”が描かれているのを探すのも楽しい。さりげなく、キャラ同士の呼び名が変わっていることから時間の流れが感じられる。

 個人的には黒尾が烏野の主将・澤村に電話をかけているシーンでのやりとりは、当時の関係性を連想させてくれて嬉しい。さらに、烏野の元マネージャーで現在はデザイナーの谷地がスペシャルマッチのロゴデザインを担当、ユニフォームデザインを烏野の元エースで現在アパレルデザイナーの東峰が担当。当時の“プレーヤー”たちが総動員である。思わず、全巻もう一度読み直したくなってしまう。

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