『花野井くんと恋の病』高校生の二人が辛い過去と向き合い、丁寧に関係を育む姿に胸が詰まる
例えば、毎朝早くから2人の待ち合わせ場所にいる花野井くんに対して、「彼女らしいことがしたい」というほたるはこっそりと早起きをして、待ち合わせの2時間前から待つことに。そのときの花野井くんの驚きとはにかむ表情に、「え、うそ、こんな顔もするんか……(ごくり)」と、一瞬自分がほたるになったかと錯覚した。そんな花野井くんの表情に、「こんなに喜んでくれる人がいるのか」と、はっとさせられるほたるの表情もあわせて愛おしい。こうした小さなやりとりも、ひとつひとつ噛みしめたくなる作品だ。
今回はコミックスの序盤をメインに紹介したが、この書評を書いている現在はコミックス10巻まで発売中。なかでも10巻は、2人にとって大きなターニングポイントとなる回で、気づくと読みながら涙がこぼれていた。少女漫画で泣くのは久しぶりかもしれない。ゆっくりと恋と愛を育むなかで、ときにつまずき、距離が空いてしまったり、後ろを振り返り足が止まってしまったりすることもあるだろう。だけど、「強くなりたい 今度こそ大切な人を大切にできる 自分になりたい」と思ったほたるを、心から応援したい。筆者が、最後までしっかりと見届けると誓った漫画である。
『花野井くんと恋の病』KCデザート1~10巻
作者:森野萌
出版社:講談社