小さな島を舞台に交錯し重なり合う想い 運命に翻弄された恋物語『海神の花嫁』
一度もつれた糸は、簡単には元に戻らない。
もつれた糸がほどけないのであれば、切ってつなぎ直せばいい。目に見えて、手に触れられる糸であれば、一度は切れてしまっても、またつながるから。だけど、心の糸は、そのもつれた糸はどうなってしまうのだろう。糸のもつれがほどける日は来るのだろうか……。もともと恋は旧字体で「戀」と書き、「糸言糸」はもつれた糸が簡単にはほどけないことを意味するという。それだけ思うようにならないものだということかもしれないが、どんなに複雑なものでも、少しずつ丁寧にほどいていけば、必ずほどけるのではないか……と、そう願いたい。
そして、「稔が失踪した」という一巻冒頭のシーンがこれからどうつながっていくのか、興趣が尽きない作品である。
書誌情報
『海神の花嫁』1~6巻
作者:小純月子
出版社:小学館