【漫画】愛する幼馴染のため善人から悪人に? 注目のwebtoon『悪い男』レビュー

 電子コミックサービス「LINEマンガ」で連載中の『悪い男』が面白い。不良/アウトローが登場する学園モノであり、ラブコメでもあり、昨今人気を集めている“リベンジ”モノの要素もある、幅広い読者が楽しめる作品で、テンポよく読み進められるタテ読み&フルカラーのwebtoon形式なのも魅力だ。

 「私は優しくて良い人と結婚する!」ーー思いを寄せる幼馴染の少女・白河サクラのそんな言葉を大事に抱え続け、高校生になるまで、何度も表彰されるほど善い行いを心掛けてきた、小松タケル。「良い人」といわれることに誇りを持ち、老人の荷物を持ってあげたり、カツアゲされる級友の身代わりになったりと、「サクラに好かれること」だけを見返りに、周囲に優しさを届けてきた。しかし、実はサクラには恋人がいて、あろうことか、それが「良い人」とはほど遠い不良生徒・米原リュウジだということが判明。「カッコいいじゃん? 悪い男って」というサクラの言葉に愕然としながら、今度は「悪い男」になる決意をするタケルだが……。

 というのが、物語の冒頭だ。タケルの父はなんと極道の親分であり、いわば「悪いこと」のエキスパートに囲まれて育っている。そのなかでブレずに正しいことを積み重ねてきた彼は、「良い人」であることが体に染み付いており、強面のおじさんたちによる「悪い男になるための指導」に四苦八苦する。

 悪知恵が働くキャラクターなら、自分の手を汚さずに「悪い男」になることもできるだろう。しかしタケルは、自分から「おじさん」たちを頼ろうとしない。そうであるなら、不良たちの世界でのし上がっていくうえで、自分自身が強くなる必要がある。実際、特訓により思わぬパワーを発揮するようになるが、それが幼少期から続けてきた「優しいこと」によってもたらされたものだというのが面白い。悪人を目指すタケルの武器は、「良い人」だったから得られたものなのだ。

 ケンカNo.1だが不良の道に進まず、とある事情でタケルを助けてくれる川畑コウジ、偏見からいち早く脱し、タケルに思いを寄せるようになる不良少女・中村レイナなど、脇を固めるキャラクターにも、読み進めるごとに愛着が湧いてくる。そうした頼れる仲間が増えていくことで、「悪」とは何なのかと考えていくタケルと、幼い頃に父親から暴力を受けて育ち、何かを失ってしまったサクラ。誰に感情移入するかで、物語の受け止め方も変わってきそうだ。

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