【今月の一冊】映画紹介からYouTubeチャンネルのノウハウまで おすすめエッセイ&ノンフィクション作品を紹介
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『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない』ジェーン・スー、高橋芳朗
昔からラブコメ映画だけは独りで観る。ティッシュ片手に我が人生を投影し、キュンとして泣いて笑って多幸感に浸るという、諸感情の移ろいを他人様に見られるのが恥ずかしいからだ。
しかし、観賞後となると話は別。誰かと語り合うことで、作品の新たな魅力や見方に気付けるのが楽しい。相手が大の映画好きで鋭い観察眼の持ち主ならば尚のこと、物語の輪郭がクリアになり、ラブストーリーに一層ときめく。
コラムニストのジェーン・スーと、音楽ジャーナリストの高橋芳朗が不朽のラブコメ名作を語り尽くす、『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない: 愛と教養のラブコメ映画講座』(ポプラ社)を読んでいて、その感覚が蘇った。
映画を愛し、欧米のライフスタイルに明るい両氏の舌好調トークは、知識のシャワーさながら。劇中の音楽に込められたメッセージや時代背景までが事細かに解説され、ぼんやりと映りがちだった異国の舞台がリアルな世界へと様変わりする。ドリューやキャメロンらが演じるヒロイン達にも血が通い出し、作品によっては、男の成長譚であることも浮き彫りにされる。一つの物語にこんなにもたくさんの引き出しがあるなんて。読了後、勝手知ったる映画の中の恋が二倍も三倍もコク深くなった。(大信トモコ)