『呪術廻戦 0』原作ならではの魅力とは? 呪霊の不気味さを伝える漫画表現
2021年12月24日に公開され、累計興行収入が67億円を突破した映画『劇場版 呪術廻戦 0』。迫力あるバトルシーンはもちろん、原作にはないオリジナルシーンが多々盛り込まれているのも、同作の見どころの一つだろう。
例えば、乙骨憂太と祈本里香の出会いや、乙骨と狗巻棘が対応した商店街の事件後に五条悟が直接現場確認に出向いている様子、百鬼夜行の新宿・京都の戦いの詳細など、より物語を理解しやすくなっている。さらに、エンドロール後には海外にいる乙骨とミゲルのもとに五条が現れ、「本編のあそこにつながるのか?」と予測できる場面もあった。原作である『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』と比べると、映画の方がより詳細に描かれている部分が多かったが、漫画ならではの良さももちろんある。
例えば「呪霊の台詞」。『呪術廻戦』に登場する呪霊は容姿も能力も千差万別。使用する言語も然りだ。本編の真人や漏瑚のようにスラスラと人語を話す呪霊、花御のように人語を理解しているが発することはできず、直接相手の脳内に言葉を送る呪霊、陀艮のようにほぼ言葉を話さない呪霊と様々。いわゆる“モブ”の呪霊もそうで、『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』に登場する“モブ呪霊”も例外でない。その台詞はホラー系フォントが使われており、人間でないものが発言していることがひと目でわかる。さらに三点リーダーが多様されていたり、意味不明な言葉だったり、この世ならざるものであることが強調されている。また、商店街で乙骨と狗巻が対峙した準1級呪霊の場合は、カタカナとひらがなが混在しており、気味の悪さも表されている。音として聴くのではなく、こうした工夫を目で見ることで意味不明な不気味さを味わうことができるだろう。
また、「擬音の偉大さ」も漫画だからこそ感じられるもの。映画であれば自ずと効果音が入るが、漫画ではそうはいかない。しかし、多くの擬音が様々なフォントで描き込まれているため、臨場感は映像に引けをとっていないのではないだろうか。また、台詞の少ないバトルシーンでの擬音は状況をしっかり確認できるガイドにもなっている。例えば乙骨と夏油傑が高専で戦っているシーン。夏油が使っている游雲らしき武器には「ジャラ」という擬音が付いていて鎖がついた武器ということがわかったり、乙骨の刀を防いだ側には「ギャン」、里香の攻撃を防いだ側には「ギ」となっていてぶつかった質感が違うことがわかったり。乙骨が自らを生贄にして里香の呪力制限を解除したと気付いた夏油には、「ゾクッ」という擬音が付いていて心情がわかるようにもなっているのだ。