林真理子が『テネシーワルツ』で描いた、華やかなりし芸能界の光と闇 執筆当時を本人が振り返る

 多くの有名人がYouTubeチャンネルを開設し、メディアでは見せない表情でファンを楽しませている昨今。人気作家・林真理子も公式チャンネル「マリコ書房 - 林真理子YouTubeチャンネル」にて、情報発信を続けている。

 同チャンネルでは元民放アナウンサーで、著者インタビューを多く手掛ける中村優子を聞き手に、毎回、林がおすすめの一冊を紹介している。1月2日公開の最新動画で、2022年最初の一冊として取り上げられたのは、『テネシーワルツ』だ。昭和のスター・江利チエミをモデルに、異父姉との交錯するドラマを描いたもので、1985年、デビュー間もない頃に林自身が書き上げた作品だ。

 戦後、スターになった妹と出会った姉は、その無邪気で幸せそうな姿を見て、妹を苦しめようと画策する。妹は、ひとり風呂場で最期を迎えるが、姉は「人はゆっくりと不幸になっていくものだから、自分が手を掛ける必要はなかった」という趣旨の思いを巡らせる……という内容で、林は「30代前半で、こうした虚無感のようなものを持っていたのは、やっぱり作家なんだな」と、過去の自分を評価していた。

 林は「当時はまだ小説に力があって、『オール讀物』や『小説現代』など中間小説雑誌がすごい人気で、そこで連載を持たせてもらうのはとても嬉しいことで、ちょっと頑張って描いた小説なんですよ」と本作を振り返る。

 「30代でどれだけのことをするかで、(作家として)消えるか消えないかというのは本当にあると思う」とも語られたが、当時は執筆活動の要領もつかめておらず、またバブル期でよく遊びもしていたため、貧血で倒れることもあったそうだ。

 動画では、華やかなりし頃の芸能界を振り返ったり、美容について語られたりと、10分少々ながら盛り沢山の内容になっている。林真理子が若き日を駆け抜けながら、力を込めて書き上げた『テネシーワルツ』から、読書の一年を始めてみてはいかがだろうか。

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