「山田ああああああああ」と叫ばずにはいられない、ネトゲからはじまる恋 『山田くんとLv999の恋をする』が面白い

 1巻、2巻……3巻と読むたびに「山田あ……」「山田ああああ……」「山田ああああああああ」と心のなかで叫んでしまう自分がいる。気がつくと、いつのまにか山田に恋をしていた。SNSを見てみると、似たような人はけっこういるらしく、みんな同じ気持ちなのかと安心する。いい大人になって、なんだろうかこの中毒性……。

 彼氏と一緒にやっていたネトゲで、ゲーム内の女に浮気をされてしまった茜。残ったのは無駄に育ったキャラとイライラした自分の気持ちだけ。ストレス発散に一人で狩りをしていると、ギルドメンバーであるプロゲーマーのアフロ男・山田に声をかけられるが、会話する気ゼロな態度に茜は八つ当たりしてしまう。その後、綺麗になって元彼を見返してやろうと参加していたネトゲのリアルイベントで、茜と山田は出会う。ゲーム内でも現実でもちょっと無愛想で嫌なやつだと思っていた山田だが、実際は……。これがネトゲからはじまる恋……!?

王道ラブコメっぽさはあるが、先の読めない展開にドギマギする

 ネトゲの攻略、オフ会やゲーム内でのやりとり、ギルド同士のトラブルなど、ネトゲをやっている人にとっては「めっちゃわかる」ネタも多いかもしれない。しかし、ネトゲをやっていない筆者でも置いてけぼりにならずに読める作品だ。

 筆者は普段、いろんなジャンルの少女漫画を読んでいるが、ネトゲからはじまる年下男子との恋は、ありそうでないような、この作品はなかなか先の展開が読めないのがいい。酔いつぶれて介抱、ライバル出現、学園祭、風邪をひいて看病などの定番イベントはあるものの、茜が感情豊かで自分のことを隠さずに真正面からぶつかっていく自爆体質のためか、山田が女心とかわからないから女性を苦手としていて恋愛に興味がないためか、シチュエーションありきで進む展開とは少し違う流れで、2人が距離を縮めていくのが新鮮だ。

 2人が自分の気持ちに気づき、その先どうしたいのかがわかるのに、少し時間がかかりもどかしい。茜にとって山田は、ネトゲの友達、年下の男の子でしかも受験生。恋愛対象としてみていいのだろうか……と悩む。一方の山田は自分を人の気持ちを深読みしたりできない、ただのつまらないやつだと思っていて、あまり恋愛については考えたことがなかったという。そんな2人が少しずつお互いの意外な一面に触れていく。

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