NEWS 増田貴久主演ドラマも注目 『古見さんは、コミュ症です。』の魅力とは?

 そして第10巻で2年生になると、新たなクラスメートとしてギャルの万場木留美子が登場。古見さんの新たな友達になる(このエピソードで古見さんの成長を実感させるのが巧い)。

 古見さんや只野くんたちと遊ぶようになり、しだいに只野くんに惹かれていくのだ。しかし古見さんの只野くんに対する気持ちも理解しており、第17巻で互いの気持ちを告白し合う。この物語は優しい世界であり、恋愛問題も爽やかだ。そして三角関係がどうなるかが、目下の一番の関心時になっている。

 さて、以上のことを踏まえて、あらためて只野くんを見てみたい。私立伊丹高校の合格基準は〝個性〟であり、奇人変人が多い。古見硝子がコミュ症など、みんな名は体を表すとばかりに、個性を主張している。そんな中で只野仁人は、名のとおりの唯の人。一見、平凡で没個性なのである。

 これを象徴しているのが、只野くんの顔だ。本作の登場人物は表情豊かであり、ヒロインの古見さんも、よくデフォルメ顔になる。ところが只野くんの、目が大きくて黒目の小さい顔は、あまり変化しないのだ。もちろん照れたり焦ったりすることはある。しかし顔自体は、ほとんど変わらない。何度か女装しているが、それも同様だ(男子クラスメートの妄想の中では、可愛く描かれている)。いささか牽強付会になるが、そこに彼のニュートラルな性格を見ることができるだろう。だから只野くんは、見かけで人を判断しない。古見さんがコミュ症であることをすぐに見抜く。第6巻から登場する、強面だが奥手の片居誠についても、すぐに本質を見抜いて受け入れる。

 さらにそのことをよく表現しているのが、第19巻の四者面談のエピソードだ。なぜか三者面談に参加させられた只野くんは、クラスメートの良い部分を的確に指摘。担任の先生から、「教師になれ? 私より面談うまいもん」といわれるのだ。個性的なクラスメートの中で、唯の人であると思っている彼は、その実、きわめて非凡な存在となっているのである。

 だから只野くんは、物語のキー・パーソンなのだ。その只野くんを増田貴久がどう演じていくのか興味津々。漫画の行方はもちろんだが、ドラマの行方も気になってならないのである。

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