ワノ国編は『ONE PIECE』終わりへの序章 物語はついに「ひとつなぎ」に
カイドウは「ひとつなぎの大秘宝」を手に入れることで恐怖と戦争を世界にもたらそうと目論む暴力の権化だ。オロチを殺したカイドウは侍たちを仲間に引き込み、ワノ国を海賊国家「新鬼ヶ島」に変えようとする。
巨大な龍に変身する力と強固な肉体を持ったカイドウは『ONE PIECE』最強と言っても過言ではないラスボス級の存在だ。すでにルフィは一度敗北しており、今のところ勝ち目はなさそうである。しかもカイドウは、もう一人の四皇であるビッグ・マムとも同盟を組んでおり「こんな奴らとどうやって戦えばいいのだ?」と、読んでいて絶望的な気持ちになる。
そんな中、勝利の鍵を握っていそうなのが、カイドウの娘でありながら、彼に殺された光月おでんを尊敬するヤマトの存在だ。自分を苦しめてきた父カイドウを倒すため、ルフィを助けるヤマトは、複雑な背景を持ったキャラクターだが、光月おでんの航海日誌を読み込みルフィの義兄・エースとも交流のあったヤマトの情報通ぶりは『ONE PIECE』オタクが漫画の中に登場したかのようである。おそらくヤマトは、読者の分身という側面もあるのだろう。
カイドウ率いる百獣海賊団との熾烈な戦いが繰り広げられる中、本来なら敵対関係にあるヤマトと光月おでんの息子・モモの助が心を通わせ、ルフィと共にカイドウ打破を目指すという捻れた展開を見せているのだが、最終的にこの戦いの命運はこの二人にかかっているのではないかと思う。
また、ルフィたちの戦いと同時進行でレフェリー(世界会議)によって変化した世界の勢力分布図や光月おでんの過去編を通して描かれた白ひげやゴール・D・ロジャーといった有名海賊の過去が描かれていることも、このシリーズの見逃せないポイントである。
「ワノ国編」を経たことで謎の多かった『ONE PIECE』の物語は「ひとつなぎ」となり、クライマックスへと向かう道筋が見えてきたと言える。
なお、2019年におこなわれた担当編集者のインタビューで「『ONE PIECE』はあと5年で終わる」と尾田栄一郎が発言していたことが語られている。コミックス97巻の質問コーナーでも終わる時期については回答しており「ワノ国編」が終わった後で、『ONE PIECE』史上“最も巨大な戦い”を描くことになると、作者は宣言している。コロナ禍の影響で執筆速度が落ちているため、2024年に終わることは難しそうだが「終わり」がすでに見えていることは確かだろう。本日発売となった最新刊は、ついに第100巻である。