『東京卍リベンジャーズ』の魅力は“全員主役級”キャラたちのチーム戦にあり そのなかでタケミチが輝く理由を考察

 そもそも、タケミチの本来の年齢が26歳であり、連載されているのが「週刊少年マガジン」という少年誌であることを思えば、同誌の想定読者たちに主人公の気持ちを共感させるのは難しいともいえるのだが、「あの時、ああしておけば……」という後悔の気持ちは、10代の少年にもないはずはない。その部分をこの花垣武道というキャラはうまく突いているといっていい。だからこそ、いま、彼の活躍は(10代の少年のみならず、世代や性別を超えた)多くの人々の共感を得られているのだと思う。

 ちなみに物語冒頭部分での彼は、「中学卒業以来、すべてから逃げてきた男」として描かれている。そんな情けない青年がある“事件”をきっかけとして、タイムリープ能力を発現させ、未来(=本来の彼にとっての現在)を変えるために奮闘する。

 しかも、彼が命を賭してがんばるのは、自分のためではなく、かつて好きだった少女や、過去で出会ったチームの仲間を守るためだ。この姿に胸を打たれない漫画ファンが果たしているだろうか。

 単行本19巻――圧倒的に不利な状況で、傷だらけになりながら、それでも、タイムリープを繰り返すことで“成長”したタケミチは、宿敵に向かってこう啖呵を切る。「オレにできる事は一つ!!(中略)死んでも諦めねぇ事だ!!」

 繰り返しになるが、「あの時、ああしておけば」という後悔の気持ちは誰にでもあるものだ。だが、この漫画の主人公のように、過去に戻って何度もやり直すことはできない。ならばどうすればいいかといえば、その答えは簡単だ。過去は変えられないかもしれないが、いま、この瞬間から先の人生を1秒たりとも無駄にしないこと。そして、諦めないこと。そのことをあらためて気づかせてくれるから、花垣武道という「泣き虫のヒーロー」の生き様は、多くの人々の胸を打つのではないだろうか。

 なお、物語が最終章に突入したいま、タケミチのタイムリープの目的は当初のそれとはだいぶ違うものになっている。また、タイプリープとはやや異なる種類の能力さえ目覚めさせつつある(こちらの覚醒については、実は以前から伏線が張られていた)。だが、それでも、彼が自分ではない“誰か”のために一所懸命になっているという点は変わらない。いずれにせよ、「ヒーロー」とは、そういう漢(おとこ)のことをいうのだろう。

■書籍情報
『東京卍リベンジャーズ(1)』
和久井健 著
定価:495円(税込)
出版社:講談社

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