『俺ガイル』『はめふら』『俺妹』のラブコメ山脈に『ろしでれ』は連なるか? 最新ランキングからライトノベルシーンを考察

 世はまさにラブコメブームのまっただ中。新刊ライトノベルのタイトルには、『恋人ごっこ』『幼なじみ』『連れ子が元カノ』『箱入りお嬢様』『僕が彼女の妹(※地雷系)を攻略』といった感じに、スイートでキラキラとした恋愛ストーリーを想像させるワードが並ぶ。

 Rakutenブックスの週間ライトノベルランキング(8月9日~15日/https://books.rakuten.co.jp/ranking/weekly/001017/#! )でも、ラブコメは人気だ。2位に定番タイトルの渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。結1』(ガガガ文庫)が入り、3位にテレビアニメの第2期が放送中の山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…11 特装版』(一迅社アイリス)、7位にこれも定番の伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない17 加奈子if』(電撃文庫)が入って支持の厚さを見せている。

 「俺ガイル」と略され、「はめふら」と呼ばれ、「俺妹」と親しまれるこれら定番ラブコメの牙城に、冒頭に挙げた新しいシリーズが食い込むかは読者の関心次第だが、そうした中にあって、既に「ろしでれ」の愛称を得て注目を浴びている新シリーズがある。燦々SUNによる『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(角川スニーカー文庫)だ。

 最新のランキングでは第2巻が44位で、第1巻が79位と順位を下げているが、1つ前の週では、7月30日の発売直後ということもあって第2巻が4位に食い込み、第1巻も11位と上位につけた。人気の理由を想像するなら、やはりタイトルにある"デレ"の要素に引きつけられるからだろう。

 「ろしでれ」のヒロイン、アーリャことアリサ・ミハイロヴナ・九条はロシア人の血をひいた銀髪の美少女で、中高一貫の進学校に中学3年時に編入して、即座に実力テストで学年トップをとって才女ぶりをみせつけた。進学した高等部でも生徒会の会計を務め、広報の周防美希と並んで1年生の二大美姫と奉られる。そんなアーリャにまったく臆すところを見せないのが、中等部時代からのクラスメートの久世政近だった。

 隣の席に座った政近は、参考書を忘れてアーリャに見せくれと頼んだり、居眠りして授業を聞いていなかったりして真面目なアーリャを憤慨させる。その時にアーリャがボソッと呟く言葉がロシア語で、政近が何を言ったか尋ねると「バーカ」といった悪態だと答えるが、実は幼少期にロシア語の映画をたくさん観てヒアリングができるようになった政近には、アーリャが正反対の内容を口にしていることが分かっていた。

 「バーカ」と説明した言葉は実は「かわいい」で、ほかにも「赤ちゃんみたい」とか「真面目にしてればかっこいいのに」とデレているにも関わらず、怒っているのだと理解したふりをしなくてはならない政近の、ムズムズとした感覚が読み手にも伝わって心をキュンとさせる。政近がロシア語が分かるとアーリャが知ったら、どんな波乱が起こるのか。そんな期待が先のエピソードへと読み手を向かわせるのだ。

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