オリンピックの花形種目! 陸上選手たちが晴れ舞台に立つまでのドラマを小説で体感しよう

戦国武将が現代に蘇って駅伝を走る! つるみ犬丸『駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介!』

つるみ犬丸『駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介!』(メディアワークス文庫)

 戦国大名の尼子氏を支えた武将として知られる山中鹿介が実は宇宙人で、現代の地球に再び舞い降りるという設定だけでも面白そうだが、その鹿介が駅伝を走るというからより興味をかき立てられる、つるみ犬丸『駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介!』。

 陸上部と決別して駅伝部を作った幼馴染みの皐月早苗とともに、駅伝を走ることになったなった天沢出雲。その出雲を尼子家の子孫として助けたいと、宇宙から来た鹿介が協力を申し出る。といっても、宇宙的な超技術で強くすることはせず、科学的で合理的なトレーニングを通じて長距離を走れるようにしていく。そこは普通のスポーツ小説だ。

 加えて、過去の辛い経験から、3kmを超えると走れなくなってしまう出雲が、心の壁をどう乗り越えていくかといったドラマもある。続編では宇宙規模の駅伝競走も繰り広げられる。オリンピックでは行われない種目だが、寒くなって駅伝シーズンを迎えたら読んでみたいシリーズだ。

落ちこぼれたちが挑む箱根駅伝 三浦しをん『風が強く吹いている』

三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫)

 直木賞作家でありながら、マンガが大好きでBLも大好きという三浦しをんが書いた作品だけに、箱根駅伝がテーマになった『風が強く吹いている』には、駅伝を走る大学生たちの熱い関係が、強いキャラクター性とともにくっきりと描かれる。

 寛政大学陸上部に所属する4年生のハイジが、万引き犯だという叫びを背に逃げていく走を見かけて陸上部へと引きずり込む。漫画好きだったり、学生の身分で司法試験に合格していたり、国費留学生だったり、陸上経験はあっても煙草まみれで走れなくなっていたり、双子だったりクイズ王だったり田舎の神童だったりといった、超個性的な8人もメンバーにして挑む箱根駅伝出場の夢。落ちこぼれたちが練習に耐えて輝きを増していく姿への共感がストーリーから湧いてくる。映画になり舞台になりアニメにもなった名作を、オリンピックで陸上に関心が向いた機会に、ぜひ。

■書誌情報
天沢夏月『ヨンケイ!!』(ポプラ社)
まはら三桃『疾風の女子マネ!』(小学館)
つるみ犬丸『駅伝激走宇宙人 その名は山中鹿介!』(メディアワークス文庫)
三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫)

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