『ハイ☆スピード!』から『DIVE!!』まで ”水泳”をめぐる名作小説&ライトノベル4選

 夏のオリンピックと言えば、やはり目が向く水泳競技。最速を競う競泳の自由形短距離やチーム力が問われるリレー競技、そして一瞬の演技にすべてをかける飛び込み競技など多彩な競技がプールを舞台に繰り広げられる。勝利する選手たちはどこが違うのか。飛び込み競技の面白さはどこにあるのか。そんな水泳競技を見るツボを教えてくれるライトノベルや児童書が数多く出ている。読んで登場人物たちに憧れて、オリンピック選手になった人もいるかもしれない。今回はそんな水泳をめぐる名作を紹介したい。

京アニ作品『Free!』の原作小説 おおじこうじ『ハイ☆スピード!』

おおじこうじ『ハイ☆スピード!』(KAエスマ文庫)

 同じスイミングクラブに通っていた小学生たちが高校で再会し、水泳部を立て直すテレビアニメ『Free!』。その原作となった『ハイ☆スピード!』は、松岡凛が七瀬遙、橘真琴、葉月渚の通う小学校とスイミングクラブに転入してくるところから始まる。

 水に入っているのが自然で自由に泳ぎたい気持ちが強い遙と、練習熱心で記録に貪欲な凛という対極的な2人に真琴や渚が関わり、メドレーリレーに挑むまでが描かれる。水泳という競技に向かう意識が選手によって違っていること、泳ぐときは1人でも、仲間やライバルがいて力を発揮できる競技であることを教えられる。

 『ハイ☆スピード!2』では、中学生となった遙と真琴が、後に大学生となって再会することになる椎名旭、桐嶋郁弥と共にメドレーリレーに挑む。凛のフリーという種目へのこだわりが、この頃から始まっていたことなど、読んでおけばアニメを観た時に、キャラクターたちの内面をより深く感じられる小説だ。

熱血水泳男子が女子小学生のコーチに 鼈甲飴雨『ピンク色のリトルマーメイド!』

鼈甲飴雨『ピンク色のリトルマーメイド!』(HJ文庫)

 中学男子の水泳大会で好記録を連発していた鷺沢薫が進学した名門校のプールが、隕石の落下で使用できなくなった。泳げず困っていた薫に手を差し伸べたのは、水泳好きの理事長が運営する霊峰学園。薫はそこで練習の合間に小学生の女子たちに水泳を教えることになる。

 しかし薫は水泳にしか興味がなく、部員の1人が「コーチなんて必要ない」と拒絶すると、「じゃ、俺は泳ぐから」と突き放す。速くなりたい1人がフォームを見てもらい、的確なアドバイスを受け速くなっていく姿に周りも感化されていく。キツいが合理的な練習方法やフォームの矯正方法が書かれていて、水泳という競技を見る目を高めてくれる。

 女子から声をかけられ、「好きな水泳選手は」と聞き返すのはさすがに朴念仁過ぎるが、その一途さも魅力に見えてしまうから、やはり何かに打ち込んでいる人はカッコ良いということで。

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