女子も女装男子も信長も「野球」が大好き? オリンピック競技を小説&ライトノベルでも楽しもう
北京五輪から13年ぶりにオリンピックに帰ってきた野球と女子ソフトボール。ソフトボールは、北京に続いて日本代表が金メダルを獲得して存在をアピールした。
日本ではずっと人気のスポーツ。『キャプテン』や『ドカベン』といった漫画だけでなく、ライトノベルやティーン向けの小説にも描かれ、その面白さと奥深さを読む人に感じさせている。
暗殺者の少年が女装で野球? 石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』
「死にゆく者の罪なら許してしまえるように、試合中のチームメイトのことならばどんな重荷も背負ってやりたくなる。打者の孤独はそうした憐憫の情を引き起こすほどに深い」
『シューレス・ジョー』のキンセラによる小説か、『菊とバット』のホワイティングが書くコラムに出てくるような、野球に関する深い洞察を含んだこの言葉が書かれていると聞けば、信頼に足る小説だと思えるだろう。たとえ主人公が女装して後宮に潜入した暗殺者の少年で、その後宮では妃たちが皇帝の目を引きたいと、野球のチームを率いてリーグ戦を繰り広げている設定だとしても……。
石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』には、打者の心理描写から強打者相手にシフトを布く戦術描写、グラブやバットといった道具の描写にいたるまで野球の真髄が詰まっている。読めば野球の醍醐味をとことん味わえるはずだ。
女子だって野球をしたい 樺薫『ぐいぐいジョーはもういない』
不世出の大打者、ジョー・ディマジオの不在を嘆く言葉がタイトルとなった樺薫『ぐいぐいジョーはもういない』は、プロ野球やオリンピックとは未だ無縁の、女子野球における熱くて激しい描写が詰まった作品だ。
ダスティン女学院の野球部を訪ねた新入生の小駒鶫子が出会ったのが、長身の美少女・城生羽紅衣。速球にも変化球にも優れた彼女の球を鶫子だけが受けられるとあって、2人はバッテリーを組む。そこから漂う百合シチューションも麗しいが、試合となれば1球1球、1打席1打席のすべてに意味を持たせ、言葉で綴って野球というスポーツの奥深さを読者に感じさせる描写も良い。オリンピックには野球とソフトボールともうひとつ、女子野球も必要だと思わせてくれる作品だ。