【漫画】憧れの叔父さんが好きだった人に衝撃 『好きな人』が描く、繊細な関係性

ーー「結婚する」と言うほど好きだったお父さんにムカつくようになり、そして叔父さんに好意を抱くようになった椿ちゃんの変化が印象的な作品でした。『好きな人』を創作したきっかけを教えていただけますか?

越谷美咲(以下、越谷):最後にどんでん返しが起きる漫画は読者の方に気に入ってもらえるかなと思い構想を練りました。男性の絆について描きたいと思っていたので、実は物語の終盤で、叔父さんの好きな人がお父さんであることが判明する物語として本作を描いています。

 なので「男性同士の関係について描かれた作品だと思わなかった」という声を多くいただいたことに驚きました。想定と異なる視点で読んでくださった方が想像よりも多くて意外に感じています。

ーー本作が男性の絆を想定して描かれていたことにわたしも驚きました。叔父さんの姪っ子に焦点を当てて作品を描いた理由を教えていただけますか?

越谷:自分は男性同士の関係を描いた作品が好きなんですけど、特に片方の男性に恋をしている女性の視点から描かれるシチュエーションが好きなんです。

 最近は同性愛に対する理解も広がっていますが、まだ異性愛の方が普通であるという認識が社会全体にあると感じているんです。男性同士の関係を描いた作品のなかに女性を登場させることによって、同性愛と異性愛のふたつが存在する世界となり、同性愛と異性愛がより平等に近づくと考えています。

ーー作中で叔父さんが椿ちゃんのお父さんに好意を抱いていることを示す、直接的な描写を入れなかったのはなぜですか?

越谷:読者層が限られてしまうと思ったからです。多くの読者の方に気に入ってもらえる作品にすることを目指していたので、男性同士の関係を題材とする作品が苦手な人にも読んでもらえるように、叔父さんの気持ちは匂わせる程度に描きました。

ーー今回の作品を執筆するにあたり、こだわったポイントを教えていただけますか?

越谷:椿ちゃんが叔父さんに好きな人のタイプを質問する場面はこだわって執筆しました。紙面で掲載することを前提にしたとき、叔父さんが好きな人の特徴を話すページとお父さんの顔が明かされるページが見開きになるようにしたんです。2つのページが並ぶことで、叔父さんの好きなタイプがお父さんに当てはまることを示唆できればと思い、早い段階でこの場面を構想していましたね。

ーー越谷さんは今後どのような作品を描いていきたいですか?

越谷:男性同士の絆を描きたいという思いは中心にあります。あと戦争や歴史にも興味があるので、これらを題材とした作品を描いてみたいです。

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