『呪術廻戦』祈本里香と両面宿儺、どっちが強い? 勝敗を分けるのは"戦う動機”か

※本稿には、『呪術廻戦』(芥見下々)の内容について触れている箇所がございます。原作を未読の方はご注意ください。

 『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)の勢いが止まらない。先月発売された最新刊(16巻)のオビによると、単行本のシリーズ累計発行部数は5000万部を突破しているようだし、この冬には待望の『劇場版 呪術廻戦 0』が公開予定だ。

 その劇場版の原作となるのは、『呪術廻戦』の0巻――すなわち、「少年ジャンプ」で『呪術廻戦』本編の連載が始まる前に、「ジャンプGIGA」にて連載された、全4話のプリクエル(前日譚)である(連載時のタイトルは『東京都立呪術高等専門学校』)。

 主人公は乙骨憂太という少年であり、『呪術廻戦』本編の主人公、虎杖悠仁はこの物語には出てこない。ちなみになぜ、『呪術廻戦』の本格的な連載が「少年ジャンプ」で始動するにあたり、“主人公の交代”が行われたのかについての考察は、以前こちらの記事(『呪術廻戦』乙骨先輩の存在は物語にどう影響する? 虎杖悠仁との違いを考察)で書いたとおりだが、まさに「陰と陽」とでもいうべき対照的なこのふたりには、ある共通点がある。

 そう――乙骨憂太にも、虎杖悠仁にも、破格の力を持った“人外の者”が取り憑いているのである(注・「憑く」という表現に違和感をおぼえる方もいるかもしれないが、ここは広義に解釈していただきたい)。

 まず、乙骨に憑いている“人外の者”だが、こちらは「祈本里香」という「特級過呪怨霊」である。里香は、乙骨の幼なじみの少女だが、ある時、車に轢かれて死んでしまう。そして、彼女が息を引きとる間際に、“呪い”の契約が発動してしまうのだ。

 里香は特級過呪怨霊と化し、そののち、乙骨に危害を加えようとする者を、容赦なく痛めつけるようになる。結果的に乙骨は秘匿死刑の対象となるが、呪術高専の五条悟が預かることによって、死刑はいったん免れる。

 しかし、暴走すれば「町1つ消える」ともいわれている里香の力は極めて危険であり、それをうまく制御できるようになるか、あるいは“解呪”するか、というのが、0巻の時点における乙骨の大きな課題となる。

 一方、虎杖悠仁に取り憑いているのは、「特級呪物」の「両面宿儺」である。もともとは人間だったが、呪術全盛の時代、術師が総力をあげて挑んでも敵わなかったという「呪いの王」だ。「死後呪物として 時代を渡る死蝋(しろう)さえ」誰も消し去ることができなかった。

 宿儺は、現代においては、20本の指の形で存在している(それゆえに「呪物」と分類されているのだろうが、死蝋となった他の身体のパーツの行方は不明)。

 虎杖悠仁はある時、ひょんなことから(と、いいつつ、実は偶然ではなく、仕組まれていた可能性が高い)、通っていた高校の百葉箱に保管されていた宿儺の指の1本を飲み込み、「受肉」してしまう。そして宿儺の「器」となるのだが、やはりこの虎杖もまた、その身のうちに秘めた力を呪術界の上層部から危険視され、五条悟が預かることで(つまり、呪術高専の生徒になることで)、死刑を免れる。

 それにしてもこの宿儺、破格の強さを秘めているのはわかるのだが、その正体はもちろん、何をやろうとしているのか、いまのところはまったくわからない。簡単に「器」である虎杖の命を見捨てることもあるし、気が向きさえすれば、“正義側”に力を貸してやることもある。

 まさに物語をかき乱すトリックスターの典型ともいうべき存在だが、実はこの宿儺、何かと虎杖の同級生、伏黒恵のことを意識している。おそらくは、伏黒の持っている能力が、宿儺の完全な復活(あるいは別の野望の実現)に使えると思っているのだろうが、物語はいま「死滅回游」編に突入し、さまざまな呪術師と呪詛師の思いが入り交じった、さらなる混沌を生み出している。

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