2021年、小説を読む人が増えた? 上半期ベストセラーで小説が占める割合が増加
参考:2021年 上半期ベストセラー<総合>(トーハン調べ)
2021年上半期ベストセラー、まずは総合ランキングについてご紹介したい。なんと、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のノベライズなどを抑えて、宇佐見りん『推し、燃ゆ』が堂々の1位である。文芸書が総合ランキングの1位を飾るのは、2013年の村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』ぶりの快挙。先日、50万部突破の朗報が舞いこんできたばかりだが、6月17日には、玉城ティナの朗読によるオーディオブックの発売も予定されており、快進撃はまだまだ続きそうである。
だが注目すべきはそれだけではない。発表された総合ランキング20位のうち、なんと6作が文芸書なのだ。ちなみに昨年、2020年の上半期ベストセラーでランキング入りしたのは『流浪の月』(凪良ゆう)、『オーバーロード(14) 滅国の魔女』(丸山くがね)、『クスノキの番人』(東野圭吾)の3作。さらに2019年も『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)、『すぐ死ぬんだから』(内館牧子)、『トラぺジウム』(高山一実)の3作のみ。つまり、ものすごくざっくりした見方をすれば、小説を読む人の割合が倍になったともいえる。
若者の本離れが激しくなった、と言われて久しいけれど、最近ではSNSの読書アカウントは増加しており、先日刊行された『死にたがりの君に贈る物語』はTikTokで紹介されたことを機に一気に読者層が広がり、重版に至ったという。コロナ禍の自粛で読書の需要が増加した影響ももちろんあるだろうが、数あるエンターテインメントのなかから、小説があらためて手に取られるようになったのならば、これほど嬉しいことはない。