『ONE PIECE』ルフィはなぜ人気者に……? 『HUNTER×HUNTER』ゴン、『NARUTO』ナルト、『ヒロアカ 』デクとの違いから考察

 2021年1月、キャラクター人気投票の歴史上、最大規模となる企画が実施された。その名も「第1回 ONE PIECEキャラクター世界人気投票」だ。主人公であるルフィが堂々の1位を獲得し、大成功を収めた本企画。しかし数々の作品で行われた人気投票において、“主人公が1位を獲れない”というイメージが強い人も少なくないだろう。それではなぜルフィは、人気No.1の主人公になり得たのか。その理由はルフィのキャラ性と、作中での立ち位置にあった。

『HUNTER×HUNTER』1巻(集英社)

 作品のファンであれば気にせずにはいられない、キャラクター人気投票。歴代有名作品の中には、メインで取り扱っているにも関わらず、主人公が1位を獲得できない作品も多い。『ONE PIECE』と同時期に連載を開始した『HUNTER×HUNTER』では、3回全ての投票で主人公のゴンではなく、親友のキルアが首位を獲得している。また『僕のヒーローアカデミア 』では主人公のライバルである爆豪が、『NARUTO』では主人公の担当上忍であるはたけカカシが1位に輝いていた。上位には食い込むものの、人気No.1の座を逃してきた主人公たち。しかし『ONE PIECE』の主人公であるルフィは、世界規模の人気投票にて見事トップに君臨して見せた。そればかりかルフィは全6回の歴代人気投票でも、6連覇を達成しているのだ。ルフィと上記した作品の主人公達との違い、それは「頼り甲斐」と「組織のトップである点」だ。

 漫画作品の主人公、特に少年漫画の場合主人公は勇気とやる気に溢れていても、少し頼りない場合が多い。「自分の身を危険に晒すハンター」や「成長途中の気弱なヒーロー」、「作中通して下忍の無鉄砲忍者」達は、仲間達に好かれてはいても頼りにされているイメージはあまりない。ルフィの怖いもの知らずで自分勝手なキャラ性も、本質的には従来の主人公像と相違ないだろう。しかしルフィには紛れもなく「頼り甲斐」があるのだ。

 ルフィが率いる海賊団「麦わらの一味」のクルーは、ピンチに直面した際必ずルフィを頼る。単行本の巻数も98巻を越えた作中では、船員が船を降りなければならない事態が幾度となく描かれてきた。「ナミがアーロンに騙されたとき」、「チョッパーがデービーバックファイトで奪われたとき」、「ロビンが世界政府に捕縛されたとき」、「サンジがヴィンスモーク家に帰還したとき」。その都度クルーたちはルフィを頼り、そして彼は自らの拳で全ての問題を解決して見せた。

 様々な人気投票の結果を見ると、読者は「元気一杯で大活躍するキャラクター」よりも、「主人公を一歩後ろから支える強く“頼り甲斐”のあるキャラクター」をカッコいいと考えているのがよく分かる。その点ルフィは主人公の基本を押さえながら、船長として頼り甲斐のあるキャラ性をプラスさせ、唯一無二のキャラクターとして仕上がっていると言えるだろう。そして上記した3人の人気キャラクターを含む、投票1位キャラの多くに共通する特徴がもう1つある。それは「天才キャラ」である点だ。

 「天才ヒーロー候補」「天才暗殺者」「天才忍者」の名前を見ても分かるように、人は天才に強く憧れる。常人では理解できない所業を涼しい顔をしてやってのける彼らを、カッコいいと思うのは当然だろう。

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