デスノートが問いかける“命に対する価値観” 14年半ぶり新刊『DEATH NOTE短編集』を読む

「命とは かけがえのないものだ」

 この短編集の帯に記された一節だ。この「当たり前じゃないか」とも言いたくなるような、我々が当然の社会的倫理として抱いている感覚を、『DEATH NOTE』という作品はこれでもかと揺さぶってくる。犯罪者を一人残らず殺してしまえば、平和に暮らす市井の人が恐れる凶悪犯罪は減るだろう。老人を減らせば少子高齢化や年金問題は容易く解決するはずだ。人を簡単に殺める兵器を高値で売れば国は潤い、国民は豊かな生活を送ることができる。自身の安寧と平和のために他人や自分自身に対する殺人を正当化し、金に群がる沢山の利己主義的な人間たち。物語内で実際に起こるこれらの事象を目の当たりにした後でも「命とは かけがえのないものだ」と果たして心から言えるのか? 読み手である我々はこの『DEATH NOTE』という作品に試されているのだ。

 この『DEATH NOTE短編集』は「Cキラ編」「aキラ編」に加え、『DEATH NOTE』連載前に「週刊少年ジャンプ」に掲載された読み切り「鏡太郎編」や、Lの日常と過去を描く「L-One Day」「L-The Wammy’s House」なども収録された、読みどころ満載の珠玉の短編集だ。コロナ禍で改めて命の重さについての議論が活発な今、この『DEATH NOTE短編集』はあなたの命に対する価値観を改めて問う1冊になるだろう。

■ふじもと
1994年生まれ、愛知県在住のカルチャーライター。ブログ「Hello,CULTURE」で音楽を中心とした様々なカルチャーについて執筆。Real Soundにも寄稿。
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■書籍情報
『DEATH NOTE短編集』(ジャンプコミックス)
著者:小畑健
原著:大場つぐみ
出版社:集英社
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