『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』編集者が語る、新しい才能への期待 「何かひとつでも光るところがあればいい」

持ち込みと投稿、どちらが有利?

——ところで、持ち込みは結構受けていますか。

林:はい。ただ、私は会社にほとんどいませんので、持ち込みは基本、ツイッターのDMで受けています。

――林さんが新人の作品をぱっと見て、最も重視する要素はなんですか。

林:それはケースバイケースです。絵だけが上手い人もいれば、セリフのセンスがある人もいる。最初から完璧な人なんかまずいないわけですから、新人の作家については何かひとつでも光るところがあればいいと思っています。むしろ、こちらとしてはそれを見抜けるかどうかが勝負ですね。

――ちなみに、持ち込みと投稿では、どちらが新人にとって有利だとお考えですか。

林:それも同じくケースバイケースでしょう。メリット/デメリットでいえば、持ち込みはすぐに編集者の感想が聞けるというのがメリットですよね。質問もその場でできますし。デメリットは、持ち込みを受けた編集者と趣味が合わない場合も少なからずある、ということでしょうか。逆に、投稿は原則的に編集部の全員が目を通しますから、持ち込みよりは、相性のいい編集者の目に止まる可能性は高いです。ただ、こちらは基本的に賞をとらないかぎり、編集者からのリターンはありません。いずれにせよ、若いうちは両方挑戦すればいいと思います。

毎週トレンド入りしていた『チェンソーマン』

『チェンソーマン』1巻(©藤本タツキ/集英社)

——話は漫画賞から離れますが、近年、最も話題になった林さんの担当作のひとつである『チェンソーマン』は、絵的には前衛的な表現を繰り広げながら、メジャーなかたちで売り出されていて、すごいと感心しました。マニアックな表現とメジャーな展開というものは両立するのですね。

林:藤本先生と一緒にお仕事させていただくのは2作目なのですが、『チェンソーマン』については、さすがに「週刊少年ジャンプ」という大きな部数の媒体が舞台になりますので、ある程度はエンタメに寄せようという話はしていました。たしかに藤本先生自身、アンダーグラウンドな資質はもちろんあると思うのですが、それだけじゃなくて、自分の作品を広く世に伝えたいという気持ちもある方ですから。おっしゃるように、絵的な面ではかなり前衛的なのですが、主人公たちがやってることは少年漫画の王道だったりします。ただ、あのチェンソーマンのデザインは、最初、私はちょっと難しいんじゃないかな、と言っていたんですけどね(笑)。

——第1部の連載中は、「ジャンプ」の新しい号が出るたびに、毎週『チェンソーマン』がらみのワードがSNSでトレンド入りしていましたよね。そのことも、昨今では、なかなか痛快な現象でした。

林:月曜の0時になった瞬間、読者の方たちがたくさん発言してくださって。ありがたいことだと思いながらSNSを見ていました。これは、電子書籍の時代ならではの現象だともいえますね。

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