“恋を忘れた”大人こそ読むべし! ラブコメ少女漫画『素敵な彼氏』が思い出させる気持ち

王道を行く展開に、自然と引き込まれる

 恋とはなんなのかをののかと共に考えさせられたころで、動き出した恋に読者は惹きつけられる。「桐山くんは私のことはなんとも思っていないのかもしれない」と足を止め、別の男子といい雰囲気になったりもする。付き合うまでにすれ違いを繰り返し、でもそのすれ違いがあったからこそ、より物語は盛り上がる。

 元カノが登場したり、直也に片想いする女子が現れたり、高校生ならではの進路の悩みにぶつかったり……。どんな時もののかにとっての一番の問題は、直也の気持ちが分かりづらいという点だ。クールで頭がよくてなんでもソツなくこなす直也だが、感情が表に出にくい。何かに熱中することもあまりなかった。

 しかしどうしても譲れないものが、ののかだったのだ。直也からしてみても、初めての経験だったからどう伝えればいいのか手探りだ。そして、ののかは鈍い。直也が相当あからさまな態度をとらないと気がつかない。読者としてはやきもきしてしまうが、ののかは迷うからこそ丁寧に自分の気持ちと向き合い、直也の気持ちを確認する。

 ののかを見ていると、「察してほしい」とか「空気を読む」ということは気にせず、相手に真正面からぶつかればいいのだと思い出させられる。

もう恋はしないという人へ

 恋をすること、恋人を作ること、というのは意外と目的になってしまいがちだ。実は誰かを好きになった結果が恋であり、恋人という関係になる。

 人と距離をとるのが当たり前の時代がやってきて、前よりも自分の恋心に気づきにくくなったかもしれない。もう恋なんていいと思う人もいるかもしれない。そんなとき、「恋って、なんだったかな」と思ったときには、手に取ってもらいたい作品である。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報

河原和音『素敵な彼氏』14巻(集英社)

『素敵な彼氏』(マーガレットコミックス)1~14巻完結
著者:河原和音
出版社:集英社
公式サイト

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