『破壊神マグちゃん』ジャンプ本誌のオアシス的存在に クトゥルー神話×ギャグ漫画の楽しさ

 『週刊少年ジャンプ』で連載されている上木敬のギャグ漫画『破壊神マグちゃん』(集英社)の第1巻が発売された。

 海辺の田舎町に住んでいる中学2年生の少女・宮薙流々(みやなぎるる)は、潮干狩りの最中に、きれいな宝珠を発見する。表面に小さなキズを見つけた流々は傷を目立たなくしようと思い「グッ!!!」と寄せようとするが、力を込めたことで宝珠は割れてしまう。

「我が眠りを妨げたのは貴様か…」
「愚かな下等生物共(ニンゲンドモ)よ…」

『マグちゃん』は『ジャンプ』2020年7月6日号より連載が開始された

 宝珠に封印されていたのは、混沌の神と呼び畏れられた破壊神マグ=メヌエクことマグちゃんだった。しかし、封印されていたマグちゃんは力を失い、身体も小さくなっていた。

 干からびかけたマグちゃんを流々は家につれて返り、納豆を食べさせる。そのことをきっかけで、流々とマグちゃんは一緒に暮らすこととなり、破壊神と少女の奇妙な共同生活がスタートする。

 1つ目のメンダコのようなキモかわいい姿をしたマグちゃんは、封印される前は、クトゥルー神話に登場する邪神を彷彿とさせる姿をしていた。

 スターチャンネルで、黒人青年の視点からラヴクラフトとクトゥルー神話を再解釈したHBO制作の海外ドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』が放送され話題となっているが、クトゥルー神話とは小説家のラヴクラフトが提唱する「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」を題材にしたホラー小説群が体系化されたものだ。物語の基本構造は、人間とは意思疎通ができない圧倒的な力を持った邪神に人間がひたすら蹂躙されるというもので、その世界観は後の作家たちに大きな影響を与えている。

 クトゥルー神話の世界観を、藤子不二雄の『オバケのQ太郎』(小学館)を彷彿とさせる日常に根ざしたギャグ漫画で展開する『破壊神マグちゃん』は、はじめは意外な組み合わせに思えた。しかし、想像以上に馴染んで見えるのは、そもそも日本における妖怪やモンスターは、人智を超えた恐怖の対象というよりは、子どもたちの友達という側面が大きいからだろう。それは、幼い頃から妖怪やモンスターの登場する物語に親しむことで生まれた一種の国民性で、藤子不二雄を筆頭に、異界の怪物と子どもが楽しく戯れる物語を描いてきた蓄積が日本の漫画にはある。その意味で『破壊神マグちゃん』は、伝統を踏まえたクラシカルな作品だと言えるだろう。