『SLAM DUNK』が追求したリアリティと『黒子のバスケ』が放つエンタメ性 両者の違いを考察
そんな絶対王者に挑戦したのが、『黒子のバスケ』だ。全30巻の発行部数は3100万部以上という数字だが、アニメ化やヴォイスコミック、ゲーム、舞台と様々な展開がされてきた大ヒット作品である。
『SLAM DUNK』がバスケットボールのリアリティを追求した作品であるのに対し、『黒子のバスケ』はフィクション要素が強いエンタメ作品だ。これこそが、『スラムダンク』と『黒子のバスケ』の一番の違いではないだろうか。
「ミスディレクション」や「エンペラーアイ」、「パーフェクトコピー」など、キセキの世代それぞれが必殺技のようなスキルを持っていることがその最たる例だ。また、キャラクターのエッジが効いているのも大きな特徴の一つだ。
主人公の黒子テツヤが存在感の無さを武器としている設定もこれまでになかったもので、エンタメ要素を高めることに一役買っている。さらに、キャラクターそれぞれにイメージカラーがあり、“映える”設定があったこともファンを取り込む要素になっていたのではないだろうか。
全く別物の「バスケットボール漫画」としてそれぞれ成功を納め、多くのファンを獲得した『SLAM DUNK』と『黒子のバスケ』。作風が大きく異なるがゆえ、ターゲットとなる読者層が大きくかぶることがなかったことも、盛り上がった要因だったのかもしれない。それぞれの良さを比較しながら、再度楽しんでみるのも面白いのではないだろうか。