『呪術廻戦』主人公の暴力描写は一線を超えた? 競うように過激化する『ジャンプ』バトル漫画
深夜アニメもスタート(10月3日〜)し、一気にブレイクの兆しを見せはじめた芥見下々の『呪術廻戦』(集英社)。『週刊少年ジャンプ』で連載されている本作は、人間の負の感情から生まれた呪霊を祓う呪術師たちの物語。
「呪いの王」と呼ばれた最強の呪霊・両面宿儺(りょうめんすくな)を身体に宿した少年・虎杖悠仁は、宿儺を封印するために都立呪術高専に転入。師匠にあたる最強の呪術師・五条悟の指導を受け、仲間の伏黒恵らと共に呪術師として成長していく。
以下、ネタバレあり。
最新巻となる第13巻では、引き続き渋谷事変が描かれる。戦いで意識を失った虎杖は、敵に10本以上の宿儺の指を無理やり呑み込まされたことで両面宿儺が覚醒し、暴走をはじめる。
第10巻からスタートした「渋谷事変」は、2018年10月31日19時に、ハロウィンで盛り上がる渋谷全域に一般人を閉じ込める謎の帳(結界)が降ろされたことからはじまった。呪術師に反旗を翻し、呪霊と共同戦線を組んだ呪詛師の夏油傑は、特急呪霊の真人たちとともに渋谷駅地下で一般人を人質に立て籠もる。彼らの目的は五条悟の封印と虎杖の中に眠る両面宿儺の覚醒。
すでに五条は夏油(の肉体を操る偽物)によって封印されてしまい、虎杖たち呪術師たちは五条奪還のために、それぞれ動き出す。かくして渋谷は呪術師と呪霊、そして呪詛師がそれぞれの利益のためにしのぎを削る戦場と化していた。
『呪術廻戦』は荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』や冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』の影響下にある、特殊な力を持った達人が知略の限りを尽くして戦う異能力バトルモノで、今回の巻では、呪術師たちと特急呪霊の陀艮との戦いによく現れている。ただ、バトルの能力はどんどん複雑化している。
今回登場した禪院直毘人の術式・投射呪法は「一秒間を24分割し、己の視界を画角として、あらかじめ画角内で作った動きを後追い(トレース)する」「術式発動中に直毘人の掌に触れられた者も1/24秒で動きを作らねばならず、失敗すれば、ガタつき一秒間フリーズする」という術だが、何度読んでも内容が理解できず、頭がこんがらがる。
『ジョジョ』も後半に行くほど戦いが複雑化し、例えば第五部に登場したキング・クリムゾンという能力は何度読んでも理解できなかったのだが、アニメで観て、なんとなく理解できた。『呪術廻戦』のアニメ化に期待しているのは複雑なバトルの絵解きで、この直毘人の術式も、はやく映像で観たいと感じた。
一方、今まで積み上げてきた能力バトルの面白さを逸脱しつつあるのも、渋谷事変の面白さである。当初はここまで重要なエピソードになるとは思わなかったが、巻を重ねるにつれて戦いが激化。ジャンプ本誌の連載は今、凄いことになっており。毎週月曜の朝になると、Twitterがショックを受けた読者の阿鼻叫喚の声で埋まる状態となっている。
おそらく『鬼滅の刃』の終盤からはじまったのだと思うのだが、最近のジャンプは漫画家同士がお互いに刺激し合っており「あいつがここまで描くなら、こっちはもっと凄い展開を描く」といったライバル意識をすごく感じる。
特に『呪術廻戦』、『チェンソーマン』、『アンデッドアンラック』、そしてジャンプでは『ONE PIECE』に継ぐ人気看板作品で、このチキンレースには参加しなくてもいいステージにいるはずの『僕のヒーローアカデミア』まで、この異様なテンションに飲み込まれつつあり、どの漫画も毎週、最終話かと思うような、先が読めない異常なテンションで話が進んでいる。