『アンデッドアンラック』がネクストブレイク確実と言われるワケ デタラメさの中にある“リアル”

 ダ・ヴィンチとniconicoが創設したユーザー投票で「次にくる」漫画を決定する「次にくるマンガ大賞2020」のコミックス部門第1位に選ばれた『アンデッドアンラック』(集英社、以下『アンデラ』)に、大きな注目が集まっている。

 『週刊少年ジャンプ』で戸塚慶文が連載している本作は、死なない身体を持つ「不死」(アンデッド)のアンディと、肌に触れた相手に不運をもたらす「不運」(アンラック)の力を持った出雲風子の2人が主人公の物語。

 否定者と呼ばれる2人の戦いは奇想天外。特に身体を切り刻んでも自動修復するアンディの戦い方は斬新で、不死の身体を駆使して襲いかかる敵を次々と倒していく。劇中には、否定者だけでなく、UMAと呼ばれる謎の怪物や、古代遺物(アーティファクト)という特殊なアイテムも登場するのだが、とにかく設定が過剰で、驚くようなアイデアがふんだんに盛り込まれている。

 物語は壮大かつ複雑だが、まだ3巻なので、読むタイミングとしては今がベストではないかと思う。

※以下、単行本3巻までのネタバレあり

 「否定」の力を持つがゆえに、ユニオン(対未確認現象統制組織)から追われていたアンディと風子だったが、ユニオンの否定者2人を倒したことで、否定者10人で構成された特殊チームの仲間入りを果たす。

 ユニオンに加わった2人は、喋る本の姿をした古代遺物「黙示録」が提示する課題(クエスト)に挑むことになる。アンディと風子は「不真実」の否定者・シェン(ナンバ-2)と共にUMA・スポイルを捕獲するためアメリカへと向かう。

 ゾンビを生み出し、あらゆるものを腐敗させる力を持ったスポイルに苦戦する風子たちだったが、アンディの中に封印されていた戦神ヴィクトールの力でスポイルを倒し、捕獲に成功する。しかしアンディの意識は戻らず、ヴィクトールが暴走。そこに特殊チームの7人が上空から現れるところで2巻が終わった。

 そして3巻では、ヴィクトールとの激しい戦いが描かれるのだが、風子も含めた否定者9人VSヴィクトールの戦いは、最終回でもおかしくない唐突な展開だったため、連載で読んだ時は「もしかして打ち切り?」とドキドキさせられた。

 ヴィクトールとユニオンの否定者たちが戦っている隙をつき、ヴィクトールに抱きついた風子はアンディの意識を呼び戻し、「不運」を発動させて大ダメージを与える。そして黒焦げになったヴィクトールの身体に封印のカードを刺し、アンディを元に戻す。

 ヴィクトールの正体は不明だが、実は彼の方がオリジナルの人格ではないかと子どもの頃の記憶がないアンディは思う。再びヴィクトールが出てきて「お前や回りの奴らを襲うかもしれない」「そうなったら…」とアンディが言うと、風子は「大丈夫だよ」「そうなった何度だって」「私の不運で助けるよ」と言う。海岸というロケーションもあってか、とても美しいやりとりである。アンディが圧倒的に強いため、一方的に守られているように見える風子だが、実は2人で支え合っているのだと実感させられる。

 スポイルを捕獲した2人は再び円卓の会議に参加。他の否定者たちも課題をクリアしたが、ひとつだけクリアできなかった課題があったため、罰(ペナルティ)が発動。理(ルール)が追加され、世界が改変される。

関連記事