『女の園の星』和山やまが語る、独自の作風が生まれるまで 「ギャグ漫画はローテンションでもいいと気づいた」
デビュー作『夢中さ、きみに。』(KADOKAWA)が「このマンガがすごい!2020」オンナ編で第2位に輝いた気鋭の漫画家・和山やま。端正な絵柄と静かなテンション、キャラクターのミクロな動作や心の機微にフォーカスすることで生まれる独自のギャグが、多くの漫画ファンを文字通り夢中にさせている。
2020年2月からはFEEL YOUNGで、初連載作品となる『女の園の星』がスタート。女子校に勤める男性教師・星先生の日常を描いた今作も、すでに多くの注目を集めている。『女の園の星』の世界観がいかに生まれたかを中心に、その創作について話を伺った。(満島エリオ)
恋愛ものを描くのに照れがあった
――和山さんが漫画を描き始めたきっかけをお聞かせください。
和山:高校三年生の頃にBL漫画を読んでから、遊びでBL漫画もどきを描くようになりました。そこから進路に迷った時に、ほかにやりたい仕事もなかったので、どうせなら漫画家を目指してみようかなと思い、大学もそういう方向に進みました。
――では、最初に描かれていたのはBL作品だったのでしょうか?
和山:最初はBLのつもりで描いていたんですが、なぜかギャグ漫画になっていったので、早い段階でギャグに転換しました。BLに限らず恋愛ものを描くのに照れがあったので、照れ隠しでギャグ寄りに見せたというのがあります。
――前作の『夢中さ、きみに。』では男子高校生たちを、『女の園の星』では女子校を舞台にしていますが、これらを描くにあたってテーマはあったのでしょうか?
和山:テーマというのをそもそも持ったことがなくて。今描きたいものを自由に描かせてもらっているのですが、常に人間のユーモアを描きたいとは思っています。舞台がいつも学校なのは、それが描きやすいからですね。子供と大人の成長過程で、一番、個々の差が出る時期という感じがして。子供もいれば大人になっている子もいるのが描きやすいです。
柔らかいタッチで描ける女の子の方が描きやすい
――『女の園の星』の「女子校の男の先生」という設定はどのように決まったのでしょう?
和山:以前から教師ものを書いてみたいと神成さん(担当編集)に伝えていて、神成さんが女子校出身と知り、「それいいな」と。『夢中さ~』では男の子が多かったんですが、男の子を描くのは大変だったので、次は女子にフォーカスしたいなと思い、女子校を舞台にしました。
――男の子を描くのが大変だったというのは少し意外です。
和山:性格とか考えは別として、脚や手の柔らかい曲線が好きなので、ビジュアル的に髪や目などを柔らかいタッチで描ける女の子の方が描きやすいです。女の子を描くとワクワクします。でも結果的に職員室でのシーンが多くなったので、星先生と小林先生でいっぱいの画面になってますね。
――描いていくうちに先生のネタの方が増えていったということでしょうか?
和山:最初は、毎話ごとに女の子1人ずつにスポットが当たるようなものをイメージしてたんですが、描いてみたら意外と先生たちとのやりとりで終わってしまって。ただ、結果的に、今の女子側と男性教師側の密度がちょうどいいバランスになっているなと思います。女子校漫画を期待して読むと期待はずれだという方もいると思うんですけど、自分的には楽しく描かせてもらってます。
星先生も小林先生もあまり生徒に干渉しない
――女子校に関するアイデアは神成さんの話を元にしているのでしょうか?
和山:最初は女子校あるあるにしようと思って話を聞いていたのですが、意外と女子高ってテンプレ的なものでもないなと感じました。よく女子校は「女捨ててる」とか「男勝りの子が多い」などと言われていると思うのですが、話を聞いてみると共学とそんなに変わりなく、人によるのかなと。なのでタイトルには「女の園」と入っていますが、あまり女子校をアピールするつもりはなくて、大げさにしないようにしています。
――「女子校の男の先生」についてはいかがですか?
和山:肩身が狭そうだなと思います。扱いが難しそうですよね。もし私が男で、女子ばっかりのところに放り込まれたらすごく敏感になると思うので、星先生も小林先生もあまり生徒に干渉しないキャラクターにするように気をつけています。
――先生のキャラクターが、熱血というわけではなく、ちょっとドライにも見えるけど生徒と仲が悪いわけでもない、という絶妙な距離感で描かれているように感じました。
和山:生徒たちが先生で遊んだり、おもちゃにしたりすることはあっても、先生として尊敬している部分は忘れないようにしていますね。女生徒たちも、誰かが特別光っていたり、派手な子や地味な子がいたりなど差があまりないようにしています。たまに変な行動をする子は出てきますが、それが良いものとも悪いものとも描かないように気をつけています。
先生側も生徒に対しての差がないように意識しています。先生の立場から見て、生徒たちが一人一人同じ濃さで見えていたらいいなと。先生側が特別気にかけてる子がいる、ということがないようにしてますね。