日本のマンガの最大の特徴は「余白の美」にあり 隠れた名作『よるくも』で堪能する

 2019年夏、英国・大英博物館で「マンガ展」が3カ月に渡って開催された。来場者数は18万人で大英博物館の企画展としては最多数の動員と言われている。出版社の垣根を越え、どれも作品を代表する決めのシーンの原画が圧倒されるボリュームで展示されていた。

大英博物館マンガ展

 例えば、『あしたのジョー』であれば「燃え尽きたぜ…」だったり、『ONE PIECE』なら麦わら一味が背中越しに片手を高々と上げているあの原画、ほかにも、萩尾望都、荒木飛呂彦、岸本斉史、諫山創、東村アキコ、野田サトル、原稿を公にしないと言われている井上雄彦など思いつく限りの著名なマンガ家はもとより、伊藤潤二、石塚真一といった通好みの作家の原画までも網羅。原画の陳列だけでなく、何かをひらめいたときに「!」を使うなどマンガ独特の「漫符」、吹き出しの視線誘導の理論など、マンガを知らない人が理解できるようにテーマに分けて学術的に「マンガという文化とは」を形作った集大成であった。あまりに圧巻で、素晴らしく、涙が出るほど感動した。

 最初で最後と言われている、大規模かつ秀逸すぎるこの展示会のキュレーターと幸運にもお話しする機会を得た。マンガの源流といわれている鳥獣戯画から現代のマンガまでを「日本の文化文明の産物」とおっしゃっていたのがとても印象的だった。

 そして日本のマンガについて、アメコミやバンド・デシネ(フランス語圏のフルカラーマンガのようなもの)との違いはどこにあるのだろう、という話になったときに「余白の美」ではないか、と見解が一致した。

 「余白の美」というのは、描写されているものだけではなく、その裏側に存在する「間」こそが、マンガだけが持つ特徴だ、ということである。マンガという表現方法には、見えない行間を読むという読書法・鑑賞法が成立する。それこそがマンガをマンガたらしめているものだと言えるのではないか、と。

 描写から「間」が読み取れることが日本のマンガの特徴というならば、独特かつ上質の「間」を読ませてくれる『よるくも』(漆原ミチ/小学館/全5巻)をすぐに思い浮かべた。