小柄な少女がカポエイラで半グレ集団と全面抗争! 格闘漫画『バトゥーキ』の新しさ
『空手バカ一代』の昔から、『グラップラー刃牙』を経て現在まで、数々の格闘漫画が描かれては、最強は誰か、最強の格闘技は何かといった争いが繰り広げられてきた。
その戦列に新たに加わり、高校生の少女が使うカポエイラという格闘技のすごさを見せている漫画が、『嘘喰い』の迫稔雄がウェブサイト「となりのヤングジャンプ」やマンガアプリ「ヤンジャン!」で連載している『バトゥーキ』だ。7月17日に最新刊『バトゥーキ8』(集英社刊)が出て、少女の戦いを更に広げる展開に突入した。
カポエイラ。南米のブラジルで生まれたこの格闘技について、日本では知られているようでまだまだ深く理解されているとは言い難い。逆立ちをしたまま足だけで戦う武術といった印象は最たるものだが、そもそも格闘技と呼んで良いものなのかすら、『バトゥーキ』を読んでいると揺らいできて、カポエイラに関するイメージが激変する。
女の子の赤ん坊が3日間、家の中に置き去りにされる不思議な経験を経て生き延び、戻ってきた父母によって育てられる。三條一里という名のその少女が中学生になった時、広島で仲が良かった佐伯栄子と再会。2人で公園に立ち寄ったところで、一里は子どもたちから小銭を集めるドレッドヘアをしたホームレスの男を見かける。
後刻、コンビニに立ち寄った一里は、ナイフを振り回す強盗に遭遇。そこに現れた公園のホームレスが、踊り始めかがみこんで強盗に尻を向け、上に足伸ばして強盗の首を刈り、あっさりと倒してしまう場面を見てしまう。初めて見たそれがカポエイラとも格闘技とも知らなかった一里は、公園に集まる他の子どもたちと一緒に、小銭を払って男が「バトゥーキ」と呼んだダンスのような動きや技を教わるようになる。
運命とも言える出会い。実は一里の出生とも大きく関わっていたカポエイラに触れ、眠っていた血が目覚めたかのごとく、一里はメストレと呼ばれる男からカポエイラを習得していく。だが、過去からの因縁が一里の一家に襲いかかる。メストレが去り、高校生になった一里は、ブラジルを仕切るマフィアが相手の中で勝ち残れるよう、B・Jなる謎の人物から最強になるための鍛錬を課せられる。
以上が『バトゥーキ』のイントロダクション。以後の内容は、一里が空手の学生王者や合気道の達人、パワフルな女性柔道家にテコンドーの使い手といった格闘技の猛者たちを相手に戦いを繰り広げ、カポエイラの技で勝利していくといったもとなる。『グラップラー刃牙』の範馬刃牙が、最大トーナメントや大擂台賽などでプロレスや中国拳法、ボクシングの使い手たちを倒し、勝ち上がっていく姿を見るような興奮を味わえるだろう。
だからといって、『バトゥーキ』がカポエイラ最強伝説をアピールするための漫画かというと違っている。確かに戦う場面で一里は、カポエイラの様々な技を駆使してみせる。ゆらぐように相手に迫るジンガ、コンビニ強盗相手にホームレスのような男が見せたハボジアハイア、回し蹴りのようなアルマーダなどなど、技名を聞くだけでも格好いいのに、それを小柄な少女が全身を使って繰り出し、ボクサーも中国拳法を使う殺し屋も倒していく姿に惚れ惚れする。食らってみたいとすら思わせる。