EXILEの結成秘話からLDH流ビジネス論まで 「Love, Dream, Happiness」を深く知るための名著4選

 EXILEらが所属するLDH JAPANは現在、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、エンタテインメント企業として様々な取り組みを行なっている。残念ながら4月末までのライブ全公演の中止・延期が発表され、それに伴って6年に1度の祭典「LDH PERFECT YEAR 2020」は来年3月まで延長することになったが、各アーティストのライブ動画や、映画『HiGH&LOW』『CINEMA FIGHTERS』シリーズの全6作品、総合エンタテインメントスクール・EXPG STUDIOのオンラインダンスレッスンサービス「EXPG ONLINE STUDIO」を期間限定で無料配信するなど、自宅でも楽しめるエンタテインメントを数多く提供している。

 リアルサウンド ブックでは、自宅で楽しめるもう一つのLDHのエンタテインメントとして、これまで刊行されてきたLDH関連の書籍をいくつか紹介していきたい。書籍を読むと、LDHがどのように発展し、どんなメッセージを伝えようとしているのかが、より深く理解できるはずだ。

EXILE HIRO『Bボーイサラリーマン』

HIRO『Bボーイサラリーマン』(幻冬舎)

 LDHファンとしてまず抑えておきたいのは、EXILE HIROの自伝的エッセイ『Bボーイサラリーマン』(幻冬舎)だろう。2005年に上梓された本書は、1998年にHIROが、当時はBABY NAILというダンスグループで活動していたMATSU(松本利夫)、ÜSA、MAKIDAIを自身のグループにスカウトするところから幕を開ける。一度はZOOで一世を風靡したものの、どうしようもない遊び人でクラブを遊び歩いていたHIROが一念発起し、アンダーグラウンドなシーンでカリスマ的な人気を誇っていたBABY NAILとともにJ Soul Brothersを結成。その後、ATSUSHI、SHUNをボーカルに迎えてEXILEとなり、日本の音楽シーンで快進撃を続け、とうとう武道館のステージに立つまでを綴った一冊だ。

 現在、LDH JAPANのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるHIROのリーダー然とした佇まいからすると、気取らない文体で明かされるその過去には意外に思える部分もあるだろう。特に、その遊び人ぶりは凄まじく、あまりの無軌道さに笑ってしまうこともしばしばだ。しかし、根底にある「Love, Dream, Happiness」の信念は、間違いなくこの時代に見出されたものである。周りのことを考えず、わがまま放題だったHIROが、裏方で働くスタッフや気にかけてくれる先輩たち、一緒に夢を見る仲間たちの大切さに気付き、30代半ばにして再び武道館へと辿り着くまでの道筋には、泥臭くも熱い男たちのドラマがある。1990年代から2000年代にかけてのクラブカルチャーとメジャーシーンの狭間に、HIROたちが見出したその哲学は、現在のLDHにも脈々と受け継がれている。綺麗ごとではない、リアルな「Love, Dream, Happiness」を知るために最適な一冊と言えるだろう。

EXILE AKIRA『THE FOOL 愚者の魂』

EXILE AKIRA『THE FOOL 愚者の魂』(毎日新聞出版)

 2006年、“EXILE第二章”からメンバーとなったEXILE AKIRAの『THE FOOL 愚者の魂』(毎日新聞出版)は、HIROの意思が次世代のメンバーにどのように受け継がれていったのかを知る上で、ぜひチェックしておきたい一冊だ。幼い頃は漫画家に憧れていた少年がスポーツに目覚め、高校卒業後にはダンサーを目指すのだが、そこから先は波乱万丈。そもそも「AKIRA」という名前はクラブでなんとなく付けられたあだ名だった(本名は黒澤良平)というエピソードも強烈だが、EXILEメンバーとの出会いもほとんど偶然で、つくづく人生の転機はどこにあるかわからないと思わされるストーリーである。

 だが、その偶然の出会いを運命と呼べるものに変えてしまうのが、EXILEというグループの面白さだ。オープンしたばかりのEXPG STUDIOにてインストラクターとなったAKIRAは、HIROたちに時に優しく、時に厳しくエンタテイナーとしての姿勢を教わることで、人間として大きく成長していく。そしてついに、AKIRAはEXILEのメンバーとして認められるのだ。

 2018年、AKIRAが所属するEXILE THE SECONDの全国ツアー『EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2017-2018 “ROUTE 6・6”』のファイナル公演で、長らく活動休止していたEXILEが復活した時、ATSUSHIは「この期間、三代目、GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICSなど、EXILE TRIBEのみんながEXILEへの思いをつないでくれていたと実感しています。そして何より、いちばんEXILEへの思いをつないでくれたのは、全員がEXILEメンバーであるSECONDだったと思います。どうかみなさん、SECONDのメンバーに拍手を送ってあげてください」と語り、その言葉にAKIRAは目に涙を浮かべていた。本書を読むと、AKIRAのEXILEに対する思いの強さがひしひしと伝わってきて、一つひとつのライブがまた感慨深く思えるのだ。

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