安住紳一郎の仕事への姿勢から、ビジネスパーソンが学べること ビジネス書ランキング首位『話すチカラ』を読む
週間ベストセラー【単行本 ビジネス書】ランキング(3月24日トーハン調べ)
1位 『話すチカラ』齋藤孝、安住紳一郎 ダイヤモンド社
2位 『嫌われる勇気』岸見一郎、古賀史健 ダイヤモンド社
3位 『Think clearly』ロルフ・ドベリ/安原実津 訳 サンマーク出版
4位 『食べる投資』満尾正 アチーブメント出版
5位 『人は話し方が9割』永松茂久 すばる舎
6位 『メモの魔力』前田裕二 幻冬舎
7位 『FACTFULNESS』ハンス・ロスリングほか 日経BP
8位 『漫画 バビロン大富豪の教え』ジョージ・S・クレイソン原著 文響社
9位 『「育ちがいい人」だけが知っていること』諏内えみ ダイヤモンド社
10位 『知識を操る超読書術』DaiGo かんき出版
今回のビジネス書ランキングは『話すチカラ』齋藤孝・安住紳一郎(ダイヤモンド社)が初登場から首位を守り抜く結果となった。5位には『人は話し方が9割』永松茂久(すばる舎)が入っているが、やはり話し方に関するビジネス書は新刊も多く、常に注目を集めるジャンルの一つだ。
過去のベストセラー本では、同じく齋藤孝氏の『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、各メディア出演で知名度の高い阿川佐和子氏の『聞く力』(文藝春秋)、会話以外のコミュニケーションスキルも含めた『伝え方が9割』佐々木圭一(ダイヤモンド社)などは、未だにこのジャンルの定番書として売れ続けている。
働き方改革が推進されようが、リモートワークが拡がろうが、動画も共有できる現代のビジネス界を、人と話すことなしに生き抜くことは不可能だろう。そんな時代を問わずコミュニケーションの基本であるワードを書名に据えた『話すチカラ』の魅力に迫りたい。
著者はテレビでもおなじみの二人だが、実は明治大学の先生と教え子の師弟関係だという。本書は、安住紳一郎氏の後輩にあたる明治大学の学生たちへ語った講義も書き起こされ、若い読者でも大変読みやすい内容となっている。知らない人と話す機会も増える、新社会人にもおすすめの一冊だ。
まず、冒頭から本書の特色が表れているのは、相手にわかりやすく伝えるため、15秒単位で話の内容をまとめることを推奨している点だ。テレビとは、常に定められた時間との勝負を課せられたメディアでもある。つまりアナウンサーとは、言葉のプロであると同時に、時間のプロでもなければならない。
人の集中力は15秒しか持続しないと言う。そうだとしたら、30秒であれば「15秒×2」の2分割。45秒であれば、「序破急」の3分割。60秒であれば、「起承転結」の4分割。このように、15秒単位で内容をまとめながら抑揚をつけ、視聴者の興味をそらさない話の組み立てが理想だと安住氏は語る。
また、齋藤氏は『声に出して読みたい日本語』シリーズなど、日本語に関する書籍が多いことでも知られているが、実は安住氏も、学生時代は国語科の教員を目指していた国語科マニアだと言う。
繰り出される国語ネタは確かにマニアックで、「令和」のアクセント・発音は8種類ある、「ん」の発音は何種類あるか? などというもの。加えて、大和言葉、漢語、カタカナ語を使用するバランスなど、普段の生活から気をつけていると、日本語のセンスが磨かれるネタにも触れている。
他にも、相手に質問するときのコツ、オウム返しをすれば相手はどんどん話してくれる等など、すぐに使えそうなコミュニケーションスキルも満載ではあるが、数あるビジネス書の中での、本書の別の読みどころを最後に挙げたい。