『鬼滅の刃』胡蝶しのぶ、美しき「毒娘」の魅力とは? 陰と陽の混じりあった“個性”に迫る

魅力的な胡蝶しのぶの両極性

 それにしてもこの、胡蝶しのぶというキャラクターのなんと魅力的なことか。平常時の彼女は、「鬼と仲良くする」という夢を語り、自らの屋敷の一部を負傷した隊士のための診療所として開放するなど、心優しい顔を見せている。だが、それと同時に、仲良くなれないとわかった鬼に対しては、微笑みすら浮かべて毒の刃を突き刺す冷酷な一面も持つ。この、他の「柱」にはあまり見られない、清濁あわせ呑むようなしのぶならではの陰と陽の混じりあった“個性”は、おそらく彼女が精通している毒と薬の両極性を象徴しているのだろう。

 いずれにしても、姉の遺志を受け継いだしのぶの想いは、今度は信頼する愛弟子に託された。そう。人を信じ、想いをつなぐ。その強い心こそが、薬学の知識よりも華麗な剣さばきよりも、胡蝶しのぶという美しき「蟲柱」が持つ最大の武器だったといっても過言ではないだろう。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69

■書籍情報
『鬼滅の刃 6』
吾峠呼世晴 著
価格:400円(本体)+税
出版社:集英社
公式サイト

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