注目の現代詩人・最果タヒ、京都文化博物館にて関西初の個展開催
中学生のころからインターネット上で言葉を発表しはじめ、2006年に投稿作品が第44回現代詩手帖賞を受賞、翌年第一詩集を刊行し第13回中原中也賞に選ばれるなど、詩人として高い評価を得ている最果タヒ。一方でSNSの活用、作詞、詩集の映画化、商業施設とのコラボレーションといった幅広い活動によって若い世代もファンに取り込み、また、空間を使った作品発表を積極的に試みるなど、その多様な表現活動は近年より一層注目を集めている。
2019年2月に横浜美術館で開催された『氷になる直前の、氷点下の水は、蝶になる直前の、さなぎの中は、詩になる直前の、横浜美術館は。―― 最果タヒ 詩の展示』では、インスタレーションを発表。詩を新たな方法で体感できる展示は話題を呼び、約1カ月間で30,000人以上が来場した。
本展覧会ではインスタレーションと、新作の展示を重要文化財である京都文化博物館別館ホール(旧日本銀行京都支店)にて展示。デザインは、これまで最果タヒの書籍の装幀をはじめ様々な企画でタッグを組んできた佐々木俊が担当している。
最果タヒ・メッセージ
言葉は、常に運動をしている。何億人もの人がその言葉を用い、それでいて、それぞれが少しずつ違った意味や印象を、言葉の向こうに見出している。だからこそ言葉は、刻々と変化し、運動を続けている。
わたし一人が、言葉を一方的に、道具として用いることなどできず、常に、言葉が抱える無数の意味や価値の渦に巻き込まれていく。
そのコントロールのできなさ、言葉に振り回される瞬間に、わたしは「言葉に書かされている」と感じます。それは時に、わたしよりも深く「わたし」を捉える言葉となる、わたしを飛び越えた、別の何かへと変貌する言葉となる、それこそが、わたしにとっての「書く喜び」です。言葉がわたしの代弁者として、世界へ出ることなどありません。わたしはいつも置き去りにされ、それこそが痛快であるのです。
知らない自分に、言葉で会うこと。それは、自分の底さえ突き破り、その向こうの、自分ですらないものへと、繋がることだ。だからこそ言葉は、書かれ、他の誰かに読まれることをじっとじっと待っている。
詩の展示。
言葉が、わたしを飛び越える。
それは、「読む」瞬間もきっと同じです。読むことは、与えられた言葉を受動的に読むのではなく、その言葉を自分だけの言葉へと変容させていく行為だと思う。そのとき、言葉の変化は、読むその人の予想を、そしてその人自身を、時に追い越していくだろう。それは「書かれた言葉」のスピードであると、読み手は思うのかもしれない。けれど、あなたも加速している、あなたの言葉が、加速している。そのスピードを、肌で、気配で、空間として、感じられる場所を、私は「詩の展示」と呼んでいます。
われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。あなたしか立つことのできない確かな星から、どうか、言葉を見に来てください。
■開催概要
『最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。』
会場:京都文化博物館・別館ホール
日程:2020年6月17日~7月5日10時~19時※月曜休館※入場は18時30分まで
入場料(税込)
【当日】一般:1,200 円 小学生:800 円
【前売】一般:1,000円 小学生:600円
※その他セットチケットなどあり
https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/1015
公式 Twitter/Instagram:@iesot6
■最果タヒ(さいはて・たひ)プロフィール
詩人・作家。1986年生まれ。2008年、『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。2015年、『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』、エッセイに『きみの言い訳は最高の芸術』、小説に 『星か獣になる季節』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、作詞提供に[Alexandros]「ハナウタ」(2018)や Little Glee Monster 「夏になって歌え」(2018)などがある。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では 100首の現代語訳をし、翌年案内エッセイ 『百人一首という感情』刊行。2019年8月発売の最新詩集『恋人たちはせーので光る』は発売後ひと月足らずで重版されるなど、より広い読者を獲得している。2017年のルミネのクリスマスキャンペーン、2018年に太田市美術館・図書館での企画展に参加、2019 年に横浜美術館で個展開催、HOTEL SHE, KYOTO での期間限定のコラボルーム「詩のホテル」オープンなど、幅広い活動が続く。最新刊は、48の「好き」なものについて綴った『「好き」の因数分解』。公式サイト:http://tahi.jp/
■佐々木俊(ささき・しゅん)プロフィール
グラフィックデザイナー/アートディレクター。1985年仙台生まれ、東京在住。2010年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。 アドブレーン、グリッツデザインを経て、2016年デザイン事務所 AYOND(アヨンド)を設立。これまで最果タヒの複数の著書、展示 環境のデザインを担当。その他の仕事として、NIKE 吉祥寺店の店舗グラフィック、東京国立近代美術館「デザインの(居)場所」 宣伝美術、連続テレビ小説『エール』タイトルロゴなどがある。参加展示として、2018年太田市美術館・図書館『ことばをながめる、ことばとあるく―詩と歌のある風景』がある。公式サイト:https://sasakishun.tumblr.com/