『人生おたすけ処方本』著者・三宅香帆が語る、ミーハー読書論「文学オタクもアニメオタクと同じ」
「“こういうことがしたいんだ”と、原点回帰できる本を」
ーー今までたくさんの本を読まれて、文章を書く上で影響を受けた方はいますか?
三宅:この本の中だったら豊島ミホさんの『夏が僕を抱く』(2009年/祥伝社)とか、さくらももこさんの『たいのおかしら』(1993年/集英社)、マーガレット・ミッチェルさんの『風と共に去りぬ』(1936年/新潮社)も、何度も読み返してますね。めちゃくちゃ元気が出ます。なかでも、影響を受けたのは橋本治さんの文章でしょうか。難しいことを噛み砕いて説明していて、すごくいいなって思います。今回も『恋愛論』(1986年/講談社)をご紹介させていただいているんですが、恋愛をテーマにした本って、だいたいハウツー的な実用書になるか、自分の体験を語るエッセイになるか、どちらかだと思うんですが、橋本さんの場合はそこがちゃんと接続しているのがすごいなと思っています。
――講演の様子を、まとめられた本ですよね。
三宅:はい。その展開がすごくスリリングで、かつ人間の深淵を見た、みたいな気持ちになるというか。最初は一般論で始まるんですけど、最後は泣き出すくらい自分の恋愛の真理みたいなところにたどり着くんです。“薄々そうだと思ってたけど、やっぱりそうですよね”みたいな。“ですよねー”と思いつつも、わかっちゃうとちょっと悲しいみたいな。
ーー何年もかかって噛み砕くっていうようなフレーズとか。
三宅:そうですそうです。だから『恋愛論』とかもやっぱり若いときに読んで、そして年取ってから読み返すとか楽しそうだなと思います。私これ最初に読んだの20代になってからだったので、10代のうちに読みたかったなって。
ーー最後に、個人的な質問なんですが「原稿の締め切りに追われているときに読む本」はどれですか?
三宅:私は、「原稿書かなきゃ、でもなかなか書き出せない~」っていうときには、恩田陸さんのエッセイをいつも読みますね。本当、もう暗唱できるくらい読んでます。“こういうテンションで文章書けたらいいな”って読みながら思うんですよ。原稿を書かなきゃーって追いつめられたときは、自分の書きたい文章に似た本を読むのがオススメですね。
ーーなるほど。“私、こういうのが面白いと思ってた”みたいな、心地いいリズムを取り戻せる感じですね。
三宅:そういうのありますよね。そういう原点回帰みたいな本を、何度も読み返すのがいいと思います。新しい本を読むとちょっと読みすぎちゃうので(笑)。あと、田辺聖子さんとか、俵万智さんとかもリズムが合うので読んだりしますね。
ーー確かに『人生おたすけ処方本』も、『恋する伊勢物語』のように作品の魅力を読みやすくして紹介しているという意味では近いですもんね。
三宅:「自分はこういうのがやりたいんだ」に近いことをやり遂げた人の本は、とても勇気をもらえるのでオススメです。自分を落ち着かせて、さらに少しだけ勢いをつけてくれる本を、ぜひ見つけてほしいですね。
(取材・文=佐藤結衣)
■書籍情報
『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』
三宅香帆 著
価格:1,400円(税別)
発行:幻冬舎
幻冬舎公式サイト:https://www.gentosha.co.jp/book/b12632.html