次世代のスーパースターはここから生まれるーーHIPHOPシーンの新たな才能が集決した『Singularity Next』レポート

 インディーズレーベル・Trigger Recordsによる出演者募集型ライブイベント『Singularity Next』が、8月19日に東京・渋谷WWW / WWWβにて開催された。

 若手アーティストの発掘とライブ機会の創出を目的に、2025年にTuneCore Japanとの提携のもとオーディション形式でスタートした同イベント。今年は「Road to WWW:2026 Season」と題してさらなるスケールアップを果たし、500組を超える応募から東京・大阪でのライブ審査を経て、Qua、SAEKI HOSHIYA、Cuffboiが出演。さらに当日は、WWWにT-STONE、who28、山田ギャル神宮、Hayato Yoshida、coco.、HIGH-TONE、Jowok、WWWβに'Sitissy luvit、源治麿、UNSAID、sorry_cherry、muccu、Tiger Roarが集結した。

 ジャンルやキャリアにとらわれず、それぞれの音楽性と熱量をステージにぶつけた出演者たち。リアルサウンドでは、WWWとWWWβのライブアクトをレポートする。次代を担う才能が交差した一夜、その熱演とともに『Singularity Next』から生まれた新たな音楽の可能性を振り返る。(編集部)

WWW ステージ(Text by 川崎龍也)

Cuffboi

 「SAMURAI SWORD」でこの日のステージをスタートさせたCuffboi。ハイパーポップやオルタナティブな感覚を取り込みながら、ラップを軸に独自のサウンドを鳴らしてきた。「楽しんでいきましょう」と声をかけ、「shopping PRA」へ。ステージを左右に動きながら軽快にフロウを乗せ、「平日だけど、ゆるく楽しんでほしい」と語りかける姿も自然体だ。「BiG COiN」ではSpank gasも加わり、2人でラップを重ねる。

 「Website」「INEEDAPOP」と続ける中、MCでは自身の楽曲がGU店舗のモニターでも流れているというエピソードも披露。肩肘張らない佇まいとは対照的に、曲が始まればしっかりとフロアを引きつけていく。最後の「光シンセイザー」では観客にスマホのライトを求め、いくつもの光が揺れる中でエモーショナルに締め括った。

Qua

 続いて登場したQuaは、“FANCY POP”を掲げ、ポップのキャッチーさとヒップホップのビート感を掛け合わせた楽曲を届けるアーティスト。1曲目の「POP MINE」から飛び跳ねるように身体を動かし、早くもフロアの熱を高めていく。「Toxic」では「よかったら覚えて帰ってください」と呼びかけ、「もっといけますか?」とフロアを煽る。そのまま「Day Off」へとテンポよくつなぎ、「dice」「STARS」では低音の効いたトラックにタイトなフロウを乗せ、ライブの空気をぐっと引き締めた。

 「Lolipop」では前方の観客も一斉にジャンプし、再びフロアの熱を引き上げる。最後は「Qua's Circus」。曲ごとに異なる表情を見せながら観客の反応を引き出していく姿からは、短いセットでもしっかりと流れを作るライブ巧者ぶりが感じられた。

coco.

 黒のハンドバッグを腕に掛け、どこか飄々とした佇まいで現れたcoco.。ヒップホップをベースに、ラップだけでなく歌でも自身の色を打ち出している。「クラゲワンダー」から伸びやかな高音を響かせると、「Tell me」「SOS」「Hustler」と続け、「WWW、調子はどうですか?」とフロアへ。MCでは「めちゃめちゃ緊張してる」と素直に明かす一方、「SAWARUNA」ではHanemiiも加わり、2人でフロウを重ねた。

 「Jealousy」「twilight」を経て、再びMCでは「24歳なのにショーパン履いてるの恥ずかしいと思ってた」と笑い、観客に前方へ来るよう呼びかけるなど親しみやすい一面ものぞかせる。「No.2」「indie rockにふれながら」と畳みかけ、最後の「Me」はアカペラからスタート。和やかなMCとのギャップも感じさせる堂々とした歌声を残して、ステージを締め括った。

Hayato Yoshida

 かつて“8(エイト)”名義で活動し、現在は本名で音楽を届けているHayato Yoshidaは、「163」でライブをスタート。続く「全部うまくいくように」では客演のKawolも登場。日常の風景を切り取ったリリックをメロディアスに届け、その言葉に応えるように客席からもいくつもの手が上がった。「夜な夜な」では一転してメロウな空気へと移り、夜の情景を思わせるムードを作り出していく。

 「自転車」を挟み、愛する人に向けて作ったという「君と地球で」では柔らかな歌声を響かせた。派手にフロアを煽るのではなく、自身の生活や感情から生まれた言葉を一つずつ届けることで観客を引き寄せていくのがHayato Yoshidaのライブなのだろう。最後は、憂鬱な月曜日を描いた「月曜日はブルー」をスタンドマイクの前からじっくりと歌い上げた。

山田ギャル神宮

 その後に姿を見せた山田ギャル神宮は、SoundCloudを起点にキャリアを重ね、インターネットやファッションなど、自身を取り巻くカルチャーを楽曲へ取り込みながら独特のヒップホップを鳴らしてきた。「sns」「bo2」と続け、オートチューンを深くかけたボーカルをビートに重ねていく。「Black Sways」ではダークなトラックに気だるさをまとったフロウを乗せ、「fashion」「gael」と進むにつれて、低く鳴るベースがWWWの空気をさらに沈み込ませていった。

 強く煽ったり大きなアクションを見せたりせずとも、声の質感とトラックだけで空間を自分のものにしてしまう。その独特の引力こそ、山田ギャル神宮のライブで強く感じた部分だった。終盤は「fiya」から「Re:flection」(aliswa)へとつなぎ、最後までダークで気だるいムードを崩さず、自身の世界観を濃く残すステージとなった。

who28

 ラップと歌を行き来しながら、ロックやオルタナティブの要素も自然に取り入れるwho28。「サマータイムレンダ」「Carchase」と立て続けに披露すると、「調子どうすか? 渋谷」とフロアへ声を飛ばした。「夜間飛行」「やめてくれよもう」では、メロディアスなフロウで感情をそのまま吐き出すように歌う。

 そして「Fuck Love」では、曲の途中で突然ステージを飛び出し客席へ。そのまま観客に囲まれながら、至近距離でマイクを握り続けた。楽曲からは繊細さや陰りも感じさせる一方、ライブでは躊躇なく観客の中へ飛び込んでいく。その大胆さとのギャップもwho28の面白さだ。「Rich & Famous」「pink」「my eyes」と続き、最後は「Changes Pt.2」。エモーショナルな歌とラップを行き来しながら、観客との距離を最後まで縮め続けた。

T-STONE

 徳島からMCバトルで名を全国に広げてきたT-STONE。そこで磨いたラップスキルと特徴的なハスキーボイスはライブでも強烈で、「調子」が始まるやいなやステージを降り、そのまま客席の中へ。〈調子がいい〉と繰り返すフックを至近距離で響かせ、開始早々からフロアを自分のペースへと引き込んでいく。

 「Intro ~Famous and Rich~」「刈(Cut It)」「白鷺」と異なるビートを自在に乗りこなす姿にも、場数を踏んできたラッパーならではの貫禄がにじむ。MCでは、地元・徳島の阿波踊りを後世に残したいという思いから作ったと「超楽しい」を紹介。その後も「流星群」「LEON」「6.12inches」(AIRIE)と畳みかけ、最後は「メトロ」へ。ステージの上でも客席の中でも変わらず場を掌握し、自身のルーツとラッパーとしての強さを存分に見せつけた。

DJ KRUTCH

 ここまでとはライブの形を変えたのがDJ KRUTCHだ。DJ/ビートメイカーとしてさまざまなアーティストと作品を作ってきた彼らしく、この日はゲストが次々とマイクをつなぐショーケースを展開。大比良瑞希を客演として迎えた「アロエの花」、大比良とリベラル a.k.a 岩間俊樹が参加する「TAKE2」を披露。そこからリベラルのみで「IN City」、おかもとえみも加わった「Beautiful Days」を展開し、「ミスター少年」の前にはリベラルが自分はいまも“少年”であることを語る場面も。

 おかもとえみによる「MOTEL」「Dry Run」と楽曲を重ね、KaminariTAKUMI「ドラゴン」では彼女に加え、急きょオファーを受けたという石田たくみ(カミナリ)も登場した。「A.S.A.P」「HIT NUMBER」「東京サーチライト」と、おかもとえみの楽曲を続けて披露。DJ KRUTCHのビートと、おかもとえみの柔らかくも芯のある歌声が重なり、ステージはよりメロウなムードへと移っていく。最後はMIDICRONICAを迎えた「Take Off」へつなぎ、そのまま次のステージへバトンを渡した。

MIDICRONICA

 アニメ『サムライチャンプルー』最終話のエンディングテーマ「san francisco」でも広く知られるMIDICRONICA。DJ KRUTCHのラスト「Take Off」からそのままバトンを受け取ると、「Bullet Train Goes Everywhere」で自身のステージをスタート。ビートボックスも交えながら「SAWAGE」へとつなぎ、「BRAIN LIQUID」ではSHAMOを呼び込んで、3人で細かく言葉を刻むスピーディーなフロウを畳みかけた。

 さらに「san francisco」から「rust」へとメドレーで披露し、長いキャリアの中で培ってきた息の合ったマイクリレーでフロアを揺らしていく。MCでは、最近ハマっている韓国ドラマではたくさんの奇跡が起こるという話から、この日初めて見た人とも“奇跡の出会い”になればと語る場面も。高いラップスキルだけでなく、ユーモアと温かさで自然と観客との距離を縮めていくところにも彼ららしさを感じる。最後は挨拶代わりの「HELLO CIRCLE」を届け、観客も大きく両手を掲げて応えた。

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