#KTCHAN「かっこいい自分を見せることだけがすべてじゃない」 2年ぶりの復活劇――MCバトルを離れて見えたもの

 

訪れたアーティストとしての転期

ーー10月11日の『戦極MCBATTLE第43章 OPEN THE GATE』への出場も決まっています。これはいつ決めたんですか?

#KTCHAN:大会後、またオファーをいただいて。今回は準優勝だったから、シンプルに優勝したかった。自己ベストは出せたけど、決勝でクボタカイくんと戦って、ラップの馬力や底力、ハングリーさがまだ足りないという課題が見えたんです。そこをあやふやにしたままアーティスト活動に戻る中途半端なことはしたくない。向き合うと決めたからには、自分が納得できるまでやりたいと思って出場を決めました。

ーー今後、MCバトルには継続的に出るんですか? それとも大会を選びながら?

#KTCHAN:MC正社員さんには本当にお世話になったので、恩返ししたい気持ちが大前提にあるんです。だから、『戦極』ならタイミングや自分の気持ち次第でまた出るかもしれない。でも、正直、先のことはまだ考えてないんです。今はただ、「もう1回挑みたい」というだけ。基本はアーティスト活動を軸にしていきます。

ーーバトルを離れていた2年間で、アーティストとして最も大きな転機になったことは?

#KTCHAN:『to face』の制作期間ですね。感情に波があって、自分の心がすごくあわあわしていた時期だったんです。2025年1月に「距離ガール」でメジャーデビューして、恋愛ソングを3曲出したあと、「our emotions」と「ホントウノコト。」を出したんです。どっちも『to face』に入ってるんですけど、この2曲は、自分の好きなものや方向性、心の核みたいなものをリリックに落とし込めた作品だったと思っていて。

ーー「our emotions」は、いつ頃、どんな気持ちから書いたんですか?

#KTCHAN:去年の夏ぐらいです。どんなに辛くて、悲しくて、苦しくても、生きていたら悩みは尽きないし、絶対逃げられない感情だから。でも逆に考えれば、すごく人間らしく生きてると思えるし、それってポジティブの素になるものでもあるなって。そうやって自分の感情の波を受け入れることができたのが「our emotions」だったんです。それまでは「今、落ち込んでるんです」みたいなことは書こうとしなかった。

――そういう面を書こうと思ったきっかけは?

#KTCHAN:自分に素直でいたいなっていうのがいちばん大きかったかも。

――当時20歳でしたが、年齢も関係していますか?

#KTCHAN:年齢は意識してなかったですけど、弱みも見せられる人間でいたいと思うようになったんです。常に明るく元気でいようとしていること自体、変だなって。常に穏やかな感情でいようとして、それが正しいと思っている自分も変だなって。

――#KTCHANには、明るいパブリックイメージがありますしね。

#KTCHAN:でも、部屋にこもってリリックと向き合って、沈んでいる私もいるわけで。そういう感情も受け止めて表現したいと思ったんです。表面的なポジティブじゃなく、ネガティブな面も受け入れた上でポジティブに持っていく。そういう自分の幅を見せてもいいと思えたのが「our emotions」だったんです。

ーーEPのタイトルを『to face』にした理由は?

#KTCHAN:人に見せている自分と、心のなかにいる本当の自分。その両面を見つめながら、真正面から自分自身と向き合った作品だったので、『to face』と付けました。孤独を感じてしまう自分や、物や人に執着してしまう自分、数字や肩書きとは別のものに幸せを感じる自分。そういう今まで見せてこなかった、見ようとしてこなかった感情と向き合ったEPなんです。

ーー自分と向き合った結果、心の持ちように変化は起きましたか?

#KTCHAN:「大丈夫」「このままでいい」と思える瞬間が増えました。問題そのものが解決していなくても、感情を言葉にできたことで、「自分は今こう感じている」と自覚できるようになって、生きることへの安心感が増えたと思います。

ーー以前は、少し生きづらさも感じていた?

#KTCHAN:というより、そういう自分を見ないようにしてたんだと思います。おいしいものを食べたら元気になるとか、寝たらすっきりするとか、ごまかしてた。でも今は、気持ちが沈んだとしても「今はこういう感情なんだ」と受け止めて、「それって視点を変えたらこういうふうに感じられるんだよ」って言葉で自分を前に導けるようになりました。

ーーEPの1曲目「私の幸せは私が決める」は、どんなテーマで書いたんですか?

#KTCHAN:もともとはドラマのエンディングテーマの話が先だったんですけど、私は相手に寄り添いがちで、自分の意見を言えず、自分を後回しにしちゃうタイプなんですね。でも本当に人を幸せにしたいなら、自分が100%納得したうえで相手のために何かしたほうが気持ちも入る。だから、まず自分の幸せを選んだうえで人の幸せを願いたいと思って書いたんです。

ーー〈「私はいいんですスタイル」の人生/リセットしてみたい〉という歌詞が、この曲の肝なんですね。

#KTCHAN:そう。そこは今の私を正直に映し出したリリックです。

ーーEPのなかで、特に新しい自分や成長を感じた曲は?

#KTCHAN:「私の幸せは私が決める」以外だと、「日々を感じて」ですね。周りの価値観じゃなく、自分が幸せだと思うことを小さなことでもいいから感じながら、背伸びせずに生きていこうというのがテーマなんです。これは自分の思いをフリースタイルに近い感覚で書きました。〈満点じゃなきゃダメみたいな/レッテルなんて剥がしちゃいな〉とか〈いいねを稼げる生活より/当たり前の方がありがたい〉とか、周りに対して思うことをストレートに書いているんです。

――サウンド面の話をすると、今回のEPを聴いて、“歌心”がマシマシになったと感じたんです。発声が変わった印象があるし、歌声に力強さや情緒が加わっていて。歌うことへの意識も高まってるんじゃないかなって。

#KTCHAN:ボイトレには今もずっと行っているんですけど、そこは無意識かも。

ーープロデューサーから、メロディや歌い方のディレクションを受けることは?

#KTCHAN:あります。特にmaeshima soshiさんとESME MORIさんは長くお世話になっているので、お互いのフィーリングがわかってきた気がします。トラックを聴いたときに「こういう感じでいきたい」っていうのが、どんどん重なり合ってきてる感覚。それに今回はサウンド面も時間をかけて作ったことが大きくて。自分にしっくりくる音域とか、自分の声がいちばん生きる音程とか、結局自分は何が好きで、どんなトラックでやりたいんだろうっていうことまで、自分と向き合って作ったから。

――ラップと歌は切り分けて考えてるんですか? 

#KTCHAN:いや、頭のなかではメロディとラップが別になっていなくて、どっちも自分の表現の一部っていう感覚です。ラップがベースにあって、そのうえでトラックを聴いたときに「ここは歌いたい」と思ったら自由にメロディを作る感じです。

ーー『to face』で自分に向き合えた今、次はどんな方向に進みたいですか?

#KTCHAN:『to face』で自分の軸ができたので、この延長で音楽に向き合っていきたいです。今回は自分自身と向き合うことがテーマだったから、次は人と向き合ったときに生まれる感情や葛藤を作品に昇華していきたいと思ってます。

ーー10月23日には、YOKOHAMA ReNY betaでバースデーライブが開催されます。

#KTCHAN:誕生日は10月6日ですけど、誕生月なのでBIRTHDAY BUSHという形でやります。会場は地元の横浜だし、私が初めてライブをやった原宿RUIDOの系列のライブハウスなんです。原宿RUIDOは思い入れのある場所だから、ここでやりたいなって。

ーー当日はどんなライブにしたいですか?

#KTCHAN:とにかく、今の自分のアーティストとしての覚悟を見せるライブにしたくて。『to face』で見えてきた方向性の延長で次のビジョンを見せて、「#KTCHAN、もっと行くな」と確信してもらえるライブにしたいです。

ーー新曲を披露する可能性もありますか?

#KTCHAN:ハイ! ぜひやりたいと思ってます。

――ゲストには、『戦極MCBATTLE 第42章』で戦ったDOTAMAさんとクボタカイさんを迎えます。

#KTCHAN:準決勝と決勝で戦った、ご縁のあるふたりなので。クボタカイくんとは『42章』の少し前に「都道府県民共済 - チーム青の共済47」も一緒に作ったばかりなので、勝手にシンパシーを感じてます(笑)。

ーー最後に、2年前にバトルを卒業した自分に、今なら何と伝えたいですか?

#KTCHAN:「いっぱい失敗しな」って言いたい。成功か失敗かを考えて踏み出さないんじゃなくて、無様でも発展途上でも、そのときのマイベストで挑戦し続ける姿勢を大事にしてほしいなって。

ーーどうして、そう思うんですか?

#KTCHAN:私は理想が高いタイプで、理想と今の自分を比べて落ち込んだり、一生完璧になれないなって悩んでたんです。でも、完璧と思える瞬間って死ぬまで来ないかもと思って。だったら、挑戦すること自体に価値があると思うようになったんです。「怖いな、失敗したら嫌だな」という理由でアクションを起こさず、成長するきっかけをなくしちゃうのはもったいない。過去の失敗があったから今があるんだって確信して活動していきたいし、失敗した自分に「ありがとう」と言える自分でいたいんです。

――理想だけでなく、そこに至るプロセスも大事だと?

#KTCHAN:そうです。点じゃなくて線なんだなって。自分と向き合っていると、「なんで私ってこういうことができないんだろう」とか思っちゃうんですよ。『第42章』に出るときも、久しぶりの復帰戦で客層も違うし、今やっていることが無駄になるかもと想像しちゃって。でも、私が完璧になるのを大会は待ってくれない。「まだだ」と思っていても、挑戦すべきときやチャンスは来る。そこで「でも、このままでいいのか」って思えたんです。

――諦めではなく、今の自分を受け入れたうえで挑戦しようと。

#KTCHAN:そう。かっこいい自分を見せることだけがすべてじゃないんだって気づいて。そういうふうに切り替えると、必要以上に焦らなくなってくる。変に背伸びしたり、かっこつけたりしない。「今の私はここまでやったんだ。だからまだ行けるよ」って自分で背中を押せるようになりました。

――〈のびしろしかないわ〉状態になるんですね(笑)。

#KTCHAN:あはは。でも、そういうことです(笑)。

――3年前、アーティストデビューしたときに「両国国技館に立ちたい」と言っていました。その目標は変わっていませんか?

#KTCHAN:ずっと変わらないです。10月のバースデーイベントも、両国につながるようなライブにしたい。今はその過程なんだぞっていうことをちゃんと見せられるようなアーティスト活動をしていきたいと思ってます。

■リリース情報
DIGITAL EP 『to face』 配信中
https://lnk.to/KTCHAN_toface

■公演情報
『Ready to 22 〜BIRTHDAY BASH〜』
日程:2026年10月23日(金)開場 19:00 / 開演 19:30
場所:横浜ReNY β
ゲスト:DOTAMA、クボタカイ
料金:¥3,000(税込)+1D
チケット:http://eplus.jp/kt-chan/

■関連リンク
公式サイト:https://ktchan.yokohama/
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