ヤングスキニー、歌の中でしか言えない“本当”のこと ドラマー・しおんラストライブ、結成6周年の足跡

ヤングスキニー、結成6周年ライブレポ

「あいつバンド辞めるんだってさ」ーーラストに届けた“本当”の言葉

 派手な演出もなく、淡々と身につまされたり身に染みたりする曲に一喜一憂できるのもすべて歌詞の嘘のなさに由来しているわけだが、中盤以降は「るっせぇ女」「君の街まで」と、無責任さと切なさの両極を表現。そしてフォーキーな語り口から一転、ゴンザレス作曲のハードなミクスチャーサウンドの「ハナイチモンメ」でカオスな側面で畳み掛けていく。男性視点で描かれるアンビバレンツから、女性視点での打算や終わった恋が歌われる「本音」と「美談」への流れはどちらも心情の解像度が高く、気持ちがぶん回される。これはおそらく長くヤングスキニーを見ている人も初見の人も、同じ気持ちになったのではないだろうか。

『ヤンスキ大宴会』

 話すことやMCのタイミングも特に決めていなかったことはのちのMCで判明したのだが、ふっと思いついたように曲について話し始めるかやゆーはメジャーデビュー当時とは比べ物にならないほど落ち着いているようでもあり、マイペースぶりは変わっていないようにも見える。「音楽って、その時の情景や人の仕草や匂いも全部思い出させる」、そんな意味合いの言葉から始まったのは「雪月花」だ。音楽のバックボーンが違う4人が、かやゆーの作る曲の良さで繋がれた理由が改めて理解できる。セットリストは恋愛のリアルから日常や生き方に移り変わり、ユーモアを込めて前を向かせてくれる「カレーライス」に接続していく。

 端的なテーマを持つ3分前後の曲が多い彼らだが、にしても派手な演出の転換もなくすでに21曲を走り抜けてきた、その没入感に心の中で感嘆していると、さすが周年企画らしく6年の振り返りをかやゆーがメンバーに促す。ゴンザレス、りょうとに続いて、しおんは少し考えた上で「全部がいい思い出だね」と告げ、かやゆーはギターを爪弾きながら「どんなこと覚えている?」と各メンバーの思い出を即興で口ずさむ。その最後に、「どんなこと覚えている?/慣れない喧嘩で殴り合い/どんなこと覚えている?/満員御礼の武道館」と自身の思い出を歌い、「あいつバンド辞めるんだってさ」とタイトルコール。この時、しおんは一体どんな表情でこの曲を演奏するんだろう? と感傷的な気分になったが、スクリーンにはMV撮影やさまざまな過去映像からしおんをフィーチャーしたムービーが投影され、彼の存在感の大きさと、かやゆーらしい感謝を毒舌と照れで包んだ歌に揺さぶられる。歌詞の〈ごめん、涙が出そうだからギターソロに行くね〉を受けてソロを任されるゴンザレスの気持ちはいかばかりか。

『ヤンスキ大宴会』

 そこからはヤングスキニーがいかに人ありきのバンドかを実感させるナンバー「精神ロック」、まるで「あいつバンド辞めるんだってさ」の答え合わせがもともと存在していたような「愛すべき日々よ」と続けて演奏される中で、ふと思う。かやゆーの好きなように生きていたいという態度は、それゆえ人それぞれの生き方を想像できる優しさが根本にあるのだな、と。幼馴染でも軽音部由来でもなく、SNSのメンバー募集で集まった4人がバンドでいられる理由もそこにあるのかもしれない。6年の時を共にしてきたことも、しおんを送り出す言葉もないけれど、本編ラストに「誰かを救ってやる暇などないけど」を据えたことで、4人が、そして会場全体がこの曲を共有したこと、それ自体が何より本物の言葉だったんじゃないだろうか。

『ヤンスキ大宴会』

 渾身の演奏に「ありがとう!」の声が上がる中、しおんを先頭に再登場した4人。「らしく」では会場が揺れるほどのジャンプを煽り、「憂鬱とバイト」のサビではこの日最大のシンガロングが起こる。終わってしまうことへの寂しさをぶった斬るように、かやゆーがジャケットを脱ぎ捨てて突入したファストな「死ぬまでに俺がやりたいこと」は、なんと2回連続で披露。かやゆーはドラム台に上がって飛び降り、しおんは「ありがとう!」の絶叫から怒濤のドラミングを放ち、最後の一打を刻みつけた。マイペースとポーカーフェイスを保っていたかやゆーに涙が見えたのは勘違いじゃないだろう。この4人でなければ成立しないバランスを見届けた気持ちは不思議と清々しいものだった。

『ヤンスキ大宴会』

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