市川由紀乃、闘病の苦難を乗り越えて向き直す人生と音楽 中森明菜や矢沢永吉から学んだこと

市川由紀乃、苦難を乗り越えて向き直す音楽

がん治療期間を支えた矢沢永吉の音楽

ーー由紀乃さんが1日も早く元気にならないと、お母さまには鶴瓶師匠と漫才のコンビを組むというミッションがあるわけですから(笑)。(BS11の番組「鶴瓶のええ歌やなぁ」でのトークより)

市川:そこまで見てくださってるんですか、ありがとうございます(笑)。

ーーお母さまはもちろん、今日の現場もそうですが由紀乃さんの周りにはポジティブなエネルギーが溢れているなと感じます。

市川:母親は本当に明るくて、ずっと喋ってるんですよ。黙っているのは寝てる時だけ(笑)。障害を持った兄もいて家族3人でずっと頑張ってきたんですが、母親は逆境とか試練とか、そういうことが大好きな人で。人生でそういう壁が立ちはだかった時は、私は今神様に試されているんだ。これを乗り越えたらあなたはもっと人として大きくなれるよっていうミッションをくださっているんだから絶対に乗り越えようって、そう考える人なんです。実際にそれを超えたら「ほら、乗り越えられた」とか「乗り越えられた私ってすごい」とか自分で言ってたりして(笑)。

ーー素晴らしいです。

市川:そういう母親がそばにいてくれたので、(抗がん剤の影響で)髪がどんどんなくなっていく時も「あなたの頭の形は本当に綺麗だ」とか「尼さんになったらすごく人気出たよ」とか、何でも褒めてくれるんです。髪が生えてきて坊主頭になる頃には、お兄ちゃんがずっと坊主だったので「お兄ちゃんそっくり!」とか言ってずっと頭を触ってました(笑)。「一度子供に戻ってまた大人になってるようなものだから、これは得したなって気持ちになった方が絶対にいい」とか言ってくれるんですよ。あまりにもずっと言われてると「もういいから」ってなる時もあるけど、結局最後は笑ってるんですよね。手術した傷口が痛いから笑わせないでって言っても、常に笑わせてくれるような母(笑)。今も本当に感謝しています。

ーーちょっと話は戻りますが、療養中は音楽を聴いたりされていたんですか?

市川:最初は聴く気にならなかったですよね。歌番組とかも通常なら絶対に見ていたんですけど、あの場所に戻りたいっていう気持ちにまだなれない時だったので、歌を聴くなど、音楽に触れることは避けてました。

ーーその後はいかがですか。この曲に支えられたとか、この歌詞に勇気づけられたなどのエピソードがあったら聞かせてください。

市川:抗がん剤治療の1回目がちょっと苦しかったんですよ。次もまたあの苦しさを味わうのかなと思って覚悟していたら、2回目に投与しているときはそこまで辛くなかったんです。そのあと1週間は味覚障害とかいろんなことが出てきちゃうんですけど、「私は乗り越えられるかもしれない…!」って思った時に出会った音楽が矢沢永吉さんだったんですよね。

ーー矢沢永吉さんですか!

市川:矢沢さんの音楽を聴いたり、YouTubeで過去に出演されていたドキュメンタリーなども見たりしたんですけど、ご自身の人生などいろんなお話をなさっていて。物心ついた時からスーパースターでいらっしゃったのでもちろん名前とか歌も知ってましたけど、自分がいろんな経験とか年齢を重ねてきて、改めて矢沢さんの言葉や生き方に触れて歌を聴いた時に、涙が止まらなくなったんです。それから矢沢さんの歌をずっと聴いてました。

ーー特にお気に入りの曲はありますか?

市川:「止まらないHa~Ha」です。

ーーてっきり、バラード系かと思ってました(笑)。

市川:一度は絶対にタオルを放り投げたいと思って、去年ライブに行ったんですよ。ライブで生歌を聴いた時は感動でしたね。ライブが終わった後の、夢の世界に連れて行ってもらってまた現実に戻ったようなのあの感情っていうのは、これまであまり味わえたことのないものでした。

ーー人生、どこでどう扉が開くかわからないですね。

市川:わからないですね(笑)。明菜さんもそうですけど、私はその歌手の人とかアーティストの方とか、好きになるとその人がどう生きてきたかを知りたくなるんです。矢沢さんの著書『成りあがり』ももちろん読みました。私は故郷が埼玉ですし今も母と一緒に住んでますけど、矢沢さんが夢を抱いていた10代の頃、それこそ広島から東京へ何のあてもなく夜行列車に乗って行くわけですけど、夢を追いかけて故郷を離れるって、どれだけの覚悟だったんだろうって思うんですよね。私は何かあったらすぐに戻れるけど、アーティストの方のお話を聞いていると、何十時間もかけて東京に出てきたっていう方も多いじゃないですか。矢沢さんも十何時間かけて東京を目指すんだけど、鈍行の列車だったからお尻が痛くなって横浜で下車したっていうエピソードが出てきますよね。横浜で降りなくて東京まで行っていたら矢沢さんの人生ってどうなってたんだろうとか、そういうのを考えることも楽しいんです。今も現役でああいう素晴らしい歌を届けられるのは、やっぱりその人の人生を感じる歌だからなんだろうなって思いますね。

ーー由紀乃さんの歌にも、同じような力があると思います。

市川:とんでもないです。矢沢さんはたくさんの方に愛されて、夢を与えて、生きる力をくださっている方なので。私はまだまだです。話は少し逸れるかもしれませんが、自分のこれからのことを考える時に、自分の感情が大きく変化するのはこのあとどういうタイミングなのかなと思うと、いつか必ずやってくる親との別れの時かなと思ったんです。その時に、自分はどういう気持ちで新たな一歩を踏み出すのか。そしてその悲しみをどうにか自分の中で乗り越える力を蓄えたいって、今思っているんですよね。元気になって復帰できたからこそこういうことも考えられるようになってきてるのかなと思うし、こうしていられるのは当たり前じゃないということが前提にあるからだと思うんですけど。誰もが経験しなきゃいけない、乗り越えていけなきゃいけないことだし、必ずやってくることでもあるので、そのためにももう少し強くなりたいっていうのはありますね。

ーーできれば考えたくない、先延ばしにしていたいことだと思いますが、今のお気持ちを言葉にしてくださった由紀乃さんのお話に共感される方はたくさんいらっしゃると思います。

市川:ありがとうございます。

ーー最後になりますが、カラオケDAMで「ちりぬるを」を歌ってくださった方に豪華な賞品が当たるキャンペーンについて聞かせてください。すでにたくさんの方が歌ってくださっているようですが、歌うときのポイントやコツがあれば教えてください。

市川:感情を徐々に高めていく、ということですね。感情を抑えるところと盛り上げるところの差を、よりはっきりさせるとさらにいいと思います。あと、最後の〈血を流す〉の部分は体操の選手でいう着地の部分なので、(軸が)ブレないように歌うと気持ちよく締まると思いますよ。皆さん自由に歌って楽しんでいただきたいですが、たとえば〈糸を引く 口紅を〉の部分など、所作や振りも参考にしていただくと感情が込めやすいかなと思います。

ーー今回の衣装としてお召しになっている着物もすごくインパクトがありますから、映像にも注目しながら歌っていただきたいですね。

市川:実はこのお着物、ここ最近ずっとジャケットなどで着ている京都の京朋という老舗の呉服問屋さんのものなんですが、もうそろそろ新曲の衣装を決めなきゃいけないというタイミングでたまたま、本当に偶然出会ったお着物なんですよ。いつものようにみんなでどういうものにしようかと選んでいたんですが、呉服屋さんイチ押しのものや、作家先生の作品などいろいろご用意していたものとは全く別のところに重ねていたものの中から、ヘアメイクさんが「これなんか良くないですか?」って言ってたまたま反物を広げてみたら「いろはにほへと ちりぬるを」って書いてあったんです。

ーーすごいご縁ですね。

市川:前作が黒とか赤の色味だったので今回黒っぽい着物はやめましょうねなんて話をしてたんですけど、これはもう決まりでしょうと。楽曲もそうですが、本当に「巡り会えた」というご縁を感じていますので、皆さんにもぜひご覧いただいて、たくさん歌っていただけたらと思っています。

■リリース情報
『ちりぬるを』
発売中
配信:https://king-records.lnk.to/chirinuruwo
<TYPE-A>:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIZM-843/
<TYPE-B>:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICM-31195/

公式サイト:https://ichikawayukino.com/

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