ALAN SHIRAHAMA、ポップスとダンスミュージックの架け橋へ 移籍第1弾「Not Enough (feat. Olivia Marsh)」で踏み出す新境地

ALAN SHIRAHAMA、移籍第1弾Sgで描く挑戦

AIを取り入れた音楽制作論 「使えるものは使った方がいい」というスタンス

ーー今回の制作において、「これがあったからこの音になった」という重要なサウンドの要素を教えてください。

ALAN SHIRAHAMA:パーカッションです。ポコポコするタムとか、パーカッシブなものが好きで、色々用意していたんです。それを渡してこのサウンドに仕上がったので、今回はパーカッションありきの楽曲というか。そこがすごく重要でした。

 そもそも、僕自身が曲を作る時も、まずドラムから組み立てるのですが、それは曲の中で一番大事なのがグルーヴだからです。だから、普段は自分でドラムを打ち込んだり、サンプルを組み合わせて試行錯誤しながら作っていますが、最近はサンプル素材生成のためにAIも使っています。

ーーそれは面白いですね。どんな感じでAIにサンプルを作らせているのですか?

ALAN SHIRAHAMA:いわゆる自然言語で「こういうタムを作ってください」みたいな感じで自分で指示を出して作らせています。AIでサンプルを作るのは、既存のサンプルサービスで手に入るものだと、どうしても他の人と被りが出てくるからなんですよね。

ーーAIで音楽を作るというと一部で否定的な見方もありますが、その点についてはどうお考えですか?

ALAN SHIRAHAMA:そうですね。日本ではまだAIに対して、アレルギーのある人ももちろんいると思うんですけど、僕は基本的に音楽制作の一部を担うツールとして捉えているというか。もちろん、AIでまるまる生成した曲をそのままリリースというのはありえないと思うんですけど、サンプル素材を作る分には「ソフトシンセと変わらないんじゃない?」っていう感覚というか。本当に制作のための素材生成機みたいなものだと思っています。

 実際、そういうツールが生まれたことによって、制作スピードが上がると思うんですよ。今までだったら1週間で2曲しか作れなかったものが、AIによって4曲作れるようになるわけじゃないですか。そうなると、商業作家の方だったら単純にコンペに出す曲が2倍になる。そういうメリットがあると思うんです。

 特に今は、モノが消費されるスピードが速くなっているので、モノを作る側の制作スピードが以前より重要になってきていると思います。もちろん、実力でスピードを上げられる人だったらいいんですけど、そうでなければ、文明の利器を使用しないと周りに置いていかれるんじゃないかなという危惧があるんですよね。だから、僕個人は、AIに対して「使えるものは使った方がいい」というスタンスです。

ALAN SHIRAHAMA(撮影=武石早代)

ーーちなみに、GENERATIONS、DJ、プロデューサー以外にもいろんなことを並行して活動されていると、やはり制作スピードは意識されますか?

ALAN SHIRAHAMA:意識しますね。特に僕は制作スピードが非常に遅い方だと思うので。それに他人と被らない素材を探すのって時間がすごくかかるんですよ。ベースミュージックの場合、みんな割と同じ素材を使っているので、聴く人が聴くと「これあのサンプルパックだな」ってすぐわかるというか。だったらAIで作っちゃった方が早いんですよね。

ーー「Not Enough (feat. Olivia Marsh)」で特に注目してほしいのはどんな部分ですか?

ALAN SHIRAHAMA:僕はいわゆる音楽プロデューサーというより、ダンスミュージックのプロデューサーでありたいとずっと考えて活動を続けているので、この曲の制作が決まった時から、ドロップ、つまり歌が乗っていない音だけのパートは絶対に作りたいと思っていました。そこはやっぱりこだわりですね。ドロップはダンスミュージックをやる上で絶対に欠かせない部分ですし、今後リリースする曲でもダンスミュージックを軸にしていくことは決めています。

 あと、僕自身、ダンスミュージックが好きなので、踊れるパートがないとやっぱり物足りないというか。特に、アウトロでラストサビの後にもう一度ドロップが来る展開が好きなんです。そういう歌だけじゃなくて音でノレる、キックとメロディとベースだけで十分、というパートは今後も絶対に入れると思います。

レーベル移籍一発目の楽曲だからこそ見せたかった側面

ーー近年、日本のみならず韓国・タイ・台湾・オーストラリア・フィリピンなど、DJとしてアジア~オセアニアの現場でプレイされています。海外のオーディエンス、特にアジアのフロアで「Not Enough (feat. Olivia Marsh)」を鳴らしたときにどんな反応が返ってくるとイメージしていますか?

ALAN SHIRAHAMA:一度、東京のイベントでかけただけなんですけど、この曲をDJセットに組み込むとなると、他のポップスも結構混ぜなきゃなというのはありますね。急に僕のベースミュージック中心のDJスタイルの中に、このメロディックでボーカルありの曲を落とし込むとみんなびっくりすると思うので、この曲のために流れを変えなきゃいけない部分もあると思っています。そう考えると45分セットだと、かけるのは難しいですけど、75分セットだったら、後半で結構いいポジションになってくるんじゃないかなと。おそらく75分セットの55分以降とかにかけると、相当フロアが沸くと思っています。

 あと、ラジオリスニングにも向いている曲なので、ラジオでも「なんだこの曲!?」って驚いてもらえると嬉しいです。

ALAN SHIRAHAMA(撮影=武石早代)

ーー先ほど、東京で一度プレイされたというお話が出ましたが、普段アッパーな曲を作られている印象があるからこそ、こういう曲調に驚いた人もいたのではないでしょうか?

ALAN SHIRAHAMA:びっくりした人はいたと思います。でも、せっかく移籍した一発目なので、想像できるバキバキのベースミュージックよりも、これぐらいスタイルを変えて、ちゃんとポップスとダンスミュージックをクロスオーバーさせようとしていることがわかる曲の方が、これからやりたいことの提示になると思うので、そこはポジティブに捉えています。

ーー今後もこういうメロディックな曲を作りつつ、得意とするスタイルの曲もやっていくという感じですか?

ALAN SHIRAHAMA:そうですね。従来のALAN SHIRAHAMAらしいベースミュージックもガンガンやっていくつもりですが、そちらは海外レーベルからリリースする時に出そうかなと思っていて。せっかくワーナーさんとやるんだったら、ボーカルが活きる曲で差別化していこうとは思っていますね。同じことをやってもちょっともったいないので。「海外レーベルで受けるものは海外レーベルで作る」という棲み分けを考えていますね。

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