荒居誠が初めて曝け出した自己 King Gnuでのクリエイティブ、個展で対峙した自分自身のための表現
King Gnuのロゴに反映されたもの、『Tokyo Rendez-Vous』の制作で得た成長
ーー今回、ご自身のための個展を初めて開催したわけですが、創作という行為は同じでも普段のクライアントワークの感覚とは全然違いますか?
荒居:最初は辛かったです(笑)。どこを喜びのポイントにしていいのかわからなかったので。クライアントワークは、相手に喜んでもらう、認めてもらうという視点で作品を作ります。個展の作品制作では、絵に向き合っているときは自分しかいないので、言うなれば僕が「これでいい」と思えばそこで終わりなんですけど、その到達点が全然分からなくて、ずっと気持ち悪い感覚がありました。今振り返ると、自分自身とすごく向き合えた時間だったと思いますし、作品の表現としても間違っていなかったと思えるものができたと思えますが、クライアントワークと比べると健全な行為ではないなと。今はまだ、自分のために絵を描くことに慣れていないからだとは思いますが。
ーー今回の個展を見ていると、当たり前ではありますが個人の表現とクライアントワークの表現に共通性はあるように思いました。過去のクライアントワークは荒居さんの作家性において重要なファクターかと思いますが、ご自身の中でターニングポイントになった作品はありますか?
荒居:考え方が大きく変わったのは、King Gnuの1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』のジャケットをデザインしたときですね。当時の僕はグラフィックデザインという分野でも未熟だし、クライアントワークという意味でも、相手が表現したいことを汲み取ることにすごく難航していて、核心を掴むことができなかったんです。なので、相手が提示した希望に対して、複数のパターンも出すようにしていました。相手にとっては選べるよさがあると思いますが、自分としてはその中でどれが一番いいのかを伝えることができなかった。これはこうだから、このデザインがいいと直線的に繋がっていたら、複数案の中でも一つが必ず強くなると思うんですけど、そういう感覚がなかったんです。『Tokyo Rendez-Vous』は自分一人で作れたとは思っていなくて、その当時の事務所でメンバーとパソコン越しに向かい合って、「ああしたい」「こうしたい」と話し合いながら一緒に作っていったんです。その過程で得た経験は、グラフィックに対する感覚だけでなく、人間的にも一つ成長できたポイントだと思います。
ーー個人的にはKing Gnuのロゴも好きです。尖っていて荒々しいが、キャッチーでストリートグラフィティ的な魅力があるというか。
荒居:独学で学んできたのでデザインのベースがないというか、本当に野生的すぎて(笑)。でも当時もめちゃくちゃパターン作ってました。デザイナーとしてこういう角度で表現してみた、みたいなエゴというか、スキルを見せたいあまりにいろんなテイストのロゴを作ったんです。そうやってめちゃくちゃロゴを作って疲弊してきた中で、最後の最後に絞り出した余力で作ったものが、あのロゴでした。結果、最初の方に出していた案とは全然違うものになりましたね。今見ると、チープだし、デザインとして洗練されているわけでもなく、独特なクセもあると思うんです。でも、だからこそ当時の自分やメンバーの姿が反映されている気もしますね。
ーーありがとうございます。最後に、個展を経て、これからどんな将来を考えていますか?
荒居:普段から将来像とか考えることないんですよね(笑)。その時々で楽しいことをしたいし、これまでもそうしてきました。自分が面白くできるのかを大事にしていて、そこは学生時代からずっと変わってなくて。だから、面白がってやれなくなったら終わりだなと思ってます。何も考えもせず、小手先でこなすような仕事をしたら終わり。これから先、やってみたい技法や分野はその時々で変わってくると思うんですけど、そのスタンスは表現者としてずっと貫いていきたいです。
■ 開催概要
荒居誠 個展「SUPER PRIVATE ― 事実無言 ―」
期間:2026年7月4日(土)~7月28日(火) ※休廊日:日曜日・月曜日
会場:Space √K(√K Contemporary地下1階)
時間:13:00-19:00
URL:https://gallery-s.co.jp/