GONTITI、困難を超えてたどり着いた現在地 “熟練パイロット”が音楽を通して巡った見果てぬ世界旅行

 結成48年目を迎えたGONTITI。ゴンザレス三上とチチ松村、2人の人生の達人がギターで会話する。どこまでもマイペースで泰然自若なイメージを彼らに抱いている人は多いだろう。割と長いブランクのようだったけど、彼らの音楽はいつものように悠々と続いているのだと。

 しかし、6年半ぶりの新作『Two Old Pilots After Twilight』を制作するにあって、2人のマインドを占めていたのは、2020年からのコロナ禍で失われたもの、止まってしまったものだった。音楽をかつてやっていたように自分の手に取り戻せるのだろうか。「2人の熟練パイロットがたそがれどきの空を飛ぶ」という意味合いのタイトルには、もう一度GONTITIの音楽で自由なイマジネーションを広げて、見果てぬ世界旅行に旅立ちたいという真剣な思いが込められている。

 いつものGONTITIのように楽しくてくつろげるけれど、その「いつも」は「これまで」とはちょっと違う。2人が困難を超えてたどり着いた現在地について、語ってもらった。(松永良平)

前作から6年半、コロナ禍の困難を経て生まれた『Two Old Pilots After Twilight』

ーー通算27作目のアルバム『Two Old Pilots After Twilight』発売おめでとうございます。なんと、前作『Assortment』(2020年)からは6年半ぶりの新作となります。

チチ松村(以下、松村):僕は、いつでも要請があれば作ります、という感じなんですが、三上さん、どうですか?

ゴンザレス三上(以下、三上):いやあ、コロナ禍さえなければ、ずっと作っていたかったですね。

ーー前作の発売直後に、世界中が新型コロナウィルスでロックダウンされてしまいましたものね。僕らリスナーは勝手なもので、GONTITIのお二人はラジオも毎週やってらっしゃるし、日常的にいろんなシチュエーションの音楽に触れる機会はずっとあった気がしてました。でも、お二人にとっては、この期間はやはり長く感じられたんですね。

松村:やっぱりね、コロナ禍はすごい衝撃でした。ライブも中止になりましたし、レコーディングも全然やれなかった。いろんなことが中止になり、すべてが止まった感じがしましたね。

三上:その影響は強いですね。6年間の間に、かつていたスタッフも辞めてしまったり、レコーディングを再開するにしても人材がいない。本当に(新作のレコーディングが)できるんかな? という状況でした。

ーー今回のレコーディングについては、GONTITIのリブート(再起動)という意味合いもあったんでしょうか?

松村:ありましたね。もうこのままフェードアウトみたいな感じなのかなあ、とすら思ってましたので。今回、このアルバムにたどり着いて世に出せたというのは、すごくうれしいです。

三上:本当に、自分たちの1枚目のアルバムが出た時以上に、リリースを待ち遠しく感じました。今現在も、ワクワクする感じが心境としてありますね。

ーーその思いは、アルバムタイトルである『Two Old Pilots After Twilight』にも表れているのかなと思いますが。

三上:そうですね。

松村:このタイトルを付けたのは、三上さん。

三上:このジャケット写真は僕が撮ったんです。たそがれどきに空を撮って、その写真をXとかにアップするということをずっとやってたんですが、そのうちの1枚です。この写真SNSにポストはしてなかったんですが、4年ほど前にアルバムの中から見つけまして。「ああ、これなら現在のコロナ禍が終わった感じと、自分たちの人生もたそがれどきということも重ね合わせて、1枚アルバムができるんじゃないかな」と思い、松村さんに相談したら、「それでいきましょう」と。それで久しぶりにレコーディングを始めたということです。

ーー「2人の年老いたパイロット」にご自身たちをなぞらえて「もう1回空を跳ぼう」ということですよね。「いろんなところに飛行機で行った自分を想像してみよう」というか。

三上:そういうことです。うまく例えていただきました。

松村:飛行機の免許は持ってないですけどね(笑)。これを聴いてくださってる方に同乗していただいて、想像の世界でいろんなところに行ってもらおうという思いはあります。

ーーGONTITIは映画やテレビのサウンドトラックを手掛けられることが多く、その制作が新曲や新作のイマジネーションの元になることも多かったと思うんですが、今回、この新作に収められた曲は、アルバムのテーマが決まったことで作曲された新曲群とも言えるのでは?

松村:コロナ禍で、僕は1人で曲をたくさん作ってたんですよ。三上さんからこのテーマで提案があった時、そこからいろんな曲を選んだという感じもありました。

三上:僕は今回、独奏を1曲(「falling petals」)入れさせていただきました。あの曲は、コロナが始まってから本当にずっと家にこもりっきりになって、練習のつもりでギターを引っ張り出して、1和音だけをずっと弾いてたのが元なんです。そしたら、コロナ禍はだんだん深刻になってきて家から出られなくなり、曲自体もだんだん膨れ上がっていった。そして、コロナが終息に向かっていって、曲も完成した。本当にコロナ禍と一緒に育ったような曲になったので、その思い出としてもぜひとも入れさせてほしい、となりました。

ーーマイペースで泰然自若な感じでずっと活動されているから、そこまでコロナ禍にダメージを感じてらっしゃったとは。

松村:いや、すごかったですよ。人間関係としても、人と会うということがなくなったから、こんな表現はおかしいかもしれないけど「世捨て人」状態になりましたね。

三上:松村さん、風貌も仙人みたいになってましたからね。

松村:髪の毛は伸びるし、ヒゲはぼうぼうだし(笑)。そんな感じでした。

ーーでも、「世捨て人」になってしまったところから、見果てぬ世界のあちこちに放浪と言いますか、飛行機で行ってみるというアイデアにつながっていくところが、GONTITIの強さだし、面白さだなと感じます。

松村:そうですね。やっぱりこもってたところから抜け出したいという気持ちがすごくあったんだと思いますね。

三上:コロナ禍があって、それが終わっても元の状態に戻るんじゃなくて、一度捨ててしまうというか、再生するような何かがこのアルバムにちょっとでも出ていたらうれしいなとは思ってます。

松村:やっぱりコロナ禍を経て、世界の気象状況や戦争や物価高……まあ、イヤなことばっかりですけど(笑)。それでも、何か日常のちょっとしたことでも喜びに代わるようなものがあればいいなという思いは、アルバムを作る上ではあったでしょうね。

ーーこのテーマで最初にお二人が取り掛かった曲は?

三上:松村さんの曲が最初じゃないですか?

松村:「コナクリの少年」かな。ギター2本だけの曲でしたね。

三上:シンプルなものから始めていった気がします。あの、僕の本当の気持ちを言いますとね、レコーディングの最初のうちは「難しいな。できるかな」というのがありました。

松村:はっはっは(笑)。

三上:いや、本当にね。それは、コロナ禍がそれほどの影響を肉体に与えたということじゃなくて、「あの昔の感じを思い出せるのかな」みたいな実感です。「レコーディングってどうやってたかな? またちゃんとできるのかな?」という気持ちがあって、本当に不安でした。デュオの曲で最初に松村さんがギターを録るのは「ああ、いつも通りやな」という感覚なんやけど、じゃあ次に僕のギターを入れるとなって、「自分がやるのか?」と思った(笑)。あれは本当に怖かったです。でも、やってみたら「思ってたよりちゃんと弾けてるな」という感じがあった。そういう部分もあったんで、レコーディングの最初にデュオ曲を選んだんでしょうね。

ーー48年というキャリアを築いてこられたのに、ある意味で、出会った頃のような状態まで引き戻されたというか。

三上:レコーディングに臨むにあたっては、1枚目の時か、それ以上のドキドキ感だったかもしれないですね。

松村:僕も「三上さん、大丈夫かなあ?」みたいな心配は最初のうちあったんですけど、やっぱり弾いていくうちに緊張はどんどん溶けていった感じはありましたね。

三上:これは冗談じゃないんですけど、僕は昼食にはいつもスタジオ近くの中華料理屋さんで中華丼を食べるんです。それを食べてるうちにレコーディングの感覚が戻ってきましたね。そしてアレンジを務めてくださっている菅谷昌弘さんの大好物である京都名物、阿闍梨餅をみんなで食べたんです。その中華丼と阿闍梨餅ですっかり緊張が溶けました、はい。食べ物は強いですよ。コロナに負けてない!(笑)

ーーコロナ禍では食事をみんなでするということもできなくなっていたわけですしね。でも確かに、新作にはお二人が感じていた緊張や新鮮さが、曲の仕上がりや演奏にも作用していたのかもと感じる部分がいくつもありました。

三上:そうだとうれしいですけどね。実際に、松村さんが主たる部分をお作りになった曲「Jumping Vovo」は、マイナーブルースをGONTITI風に変形させたような作りで、今まであまりやったことのないタイプだったんです。僕にできるかな、と思ってたんですけど、意外とGONTITI風のブルースを自分のアドリブでも表現できた気がする。そういうところは日頃のGONTITIとは違うかもしれない。

松村:あの曲は、ブルース系のコード進行なんですけど、ちょっとアラブ系の音階みたいな要素も入ってるんですよ。「なんか不思議な曲が生まれたな。この曲ちょっと面白いんじゃないかな」と思いまして、三上さんに聴いてもらったら「僕、これできないかもしれない」と言われて「えー!」ってなったのは覚えてますね(笑)。

三上:そうなんですよ。テーマのメロディが難しい。鍵盤の方だと簡単にできるんですけど、ギターだと難しい部分もありましたね。

ーーそういう率直な言葉を言い合える仲だということでもありますよ。それに、コロナ禍で強制的に離されていた時期があったからこそ、お互いに「GONTITIってどんなだっけ?」と考えていく過程があって、新たに生まれた要素なのかもしれない。

三上:もちろん「円熟」という言い方もありますけど、それ以上に、ちゃんとしたものを音楽として鳴らせるかどうか、それが難しかったですね。年齢には勝てないけど、演奏では「衰えた」という感覚は、今回のアルバムでもないです。ただ、それ以前に「できるだろうか?」なんて不安は今まで感じたことなかったから、それを克服しないといけなかった。やろうと思えば何でもできると思ってやってきたから。

松村:僕の場合は、年齢は重ねてるんですけど、不思議なことに、ギターは今一番いい感じかなと思ってます。三上さんの曲に僕がサイドギターを入れる時でも、そんなにやり直しがなく、順調にいった感じがある。

ーー一撃で仕留めるんじゃなく、寝技とか関節技がうまくなってるような?

松村:表現は難しいですけど、長いことブランクがあったので、ものすごく音楽に集中していた。その集中力が向上したような感覚もちょっとあるんですけどね。

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