GANG PARADE THE LAST ROAD Vol.4:キャ・ノン「ギャンパレの亡霊として生きていくしかない」 意志と覚悟、“本物”のなり方
2026年、GANG PARADEは解散する。その事実を前にして、彼女たちは今何を思うのか――。「信じたくない」といまだに思っているかもしれない。もうずっと前から終わりを覚悟していたと思っているかもしれない。あるいは、ただ静かに、胸の奥に何かが積もっていくのを感じているだけかもしれない。その最後の心の機微をリアルサウンドは全力でキャッチしようと思う。最初で最後のGANG PARADEメンバーのソロインタビュー連載をここに始める。撮影のために、メンバーにはいちばんお気に入りの衣装、いちばん思い出深い衣装をそれぞれに選んでもらった。インタビューの最後には、GANG PARADEの衣装をすべて手がけてきた外林健太のコメントも掲載する。最後の道を歩く11人の声、思いをここに刻んでいこうと思う。
第4回目は、キャ・ノン。彼女には、ずっと自分の意思がなかったという。言われるがままに髪を切り、まわりに流されるようにしてダンスを習い、「親が喜ぶなら」と芸能の世界に入った。それはそれですごく楽しくて、ステージに立つことの気持ちよさも知っていた。アイドルとしての素質を宿していたことは、その道のりが証明しているものでもある。だが、「自分がこうなりたい」という感覚はずっとどこにもなかった。
今回のインタビューでは、「これになりたい」と思った初めての瞬間のことを話してもらった。それはつまり、WACKとGANG PARADEに繋がっていくことの話なのだが、今あらためて思うのは、彼女は人生をかけてキャ・ノンとしての歩みを刻んできたということだ。多くのファンにとって愛情を注ぐ対象でありながら、観ている者が自分の何かと重なるような儚さや脆さをキャ・ノンは持っていた。“孤独”と言うと、過度に物語的になってしまうかもしれないが、一つひとつの喜びを、一つひとつの悲しみを、一つひとつの気づきを、彼女はいつも丁寧に表現してきた。さまざまな経験を経て、今こそ自分が本物になるために、「キャ・ノンはこうやって生きていく」という覚悟と宣言をもって道を切り開くしかない。そういう確信を抱いて進んできたのが、彼女のWACK人生だったのだとつくづく思う。
ファンとして憧れ続けたWACKの一員として、GANG PARADEの一員として駆け抜けてきたャ・ノンの数年間は、今“解散”というカウントダウンのなかにある。この先、これ以上の日々は訪れないだろうから、どの瞬間も無駄にしたくないし、ずっと覚えていたい――。インタビューの最後に、キャ・ノンは朗らかに、とてもすっきりとした顔でそう言ってくれた。終わりに向かっていく言葉が重くならないのは、今が充ちているということの証左でもある。キャ・ノンに授けられたものを完全燃焼させてきた、そんな怒涛の日々を一緒に振り返った。(編集部)
私、小学生の時はかわいくて。原宿を歩くと10社くらいから声をかけられてました
――キャ・ノンさんは9月20日生まれ、東京都出身。都会っ子ですね。
キャ・ノン:はい、かなり。
――家族構成は?
キャ・ノン:父、母、兄、私です。
――お兄さんとは仲良しですか?
キャ・ノン:昔は仲良かったんですけど、一度仲が悪い時期を挟んで、最近また仲良くなりました(笑)。小さい頃は兄の友達とも一緒に遊んで、鬼ごっことかに混ぜてもらってました。
――最初の記憶として思い浮かぶことは?
キャ・ノン:なんだろう? 5歳くらいからしか覚えてない(笑)。兄が通ってた幼稚園の母のママ友の妹たちと遊んでたのは、よく覚えてます。あと、兄とチャンバラをして遊んでたのとか。両手に団扇を持ってチャンバラしてたら自分の目のまわりを怪我しちゃって。兄が怒られちゃって、申し訳ないなと当時も思った気がします。幼稚園くらいの頃がいちばん元気だったのかも。
――幼稚園の頃は、どんなことが好きでした?
キャ・ノン:『パワーパフ ガールズ』が好きで、バブルスになりたかったんですよね。まわりの子たちもみんな『パワーパフ ガールズ』を観ていましたね。ごっこ遊びの時にバブルスが人気で、いつも取り合いでした。その頃からずっと水色が好きで、何を塗るにも水色。服とかも水色のものを選んでいました。
――小さい頃の習い事は?
キャ・ノン:幼稚園の時はダンス。小学生の頃は、ダンスに加えて、バレエと書道。あと、前の事務所に所属していた時は、演技レッスンも受けてました。
――ダンス、バレエを習っていたということは、小さい頃から芸事に興味があったんですか?
キャ・ノン:それが、別になかったんですよ(笑)。ダンスもまわりの仲良い子たちがやっていて、「やってみたら?」と言われたから始めた感じでした。
――芸能事務所に所属したのは、何歳くらいの時?
キャ・ノン:小5の時だったと思います。その前から子役事務所みたいなところにいたんですけど。
――子役を始めたきっかけは?
キャ・ノン:スカウトしてもらったことがきっかけです。私、小学生の時はかわいくて。小5くらいがいちばんかわいかった(笑)。原宿を歩くと10社くらいから声をかけられてました。でも、正直よくわかっていなくて「お母さんが喜んでくれるなら」と事務所に所属するようになりました。
――子役として、どのようなお仕事をしました?
キャ・ノン:映画で主役の方の幼少期をやらせていただいたり。あと、学校の制服のモデルとかもやらせていただいてました。
――お仕事をしたり、レッスンを受けたりするなかで、芸能界への興味は出てきました?
キャ・ノン:芸能のお仕事は楽しかったです。中学生の時にダンスレッスンを受けていて、その年の末にライブをやることになって、気づいたらそのグループでデビューすることになったんですよね。その時に初めてアイドルという形でライブをして、「この世にこんなに楽しいお仕事が存在するんだ」って思ったのを覚えてます。
中学生くらいまで、自分の意思がなかったんです。髪型とかもどうでもよかった
――小学生の頃の学校生活は、どんな感じでした?
キャ・ノン:普通の子どもだったと思います。小6くらいで、授業中に寝ることの気持ちよさに気づきました(笑)。クラブ活動とかはしてなかったです。中学生くらいまで、自分の意思がなかったんですよね。髪型とかもどうでもよかったです。長い、短い、前髪がある、前髪がないとかもよくわかってなくて、言われるがままに切ったりしてました。
――音楽が好きになったのは、いつ頃でした?
キャ・ノン:中学生の時でしたね。中学の時はいろいろあって、まわりの子たちとうまくいかない時期とかもあって。本や音楽だったりは、その世界にいられるので好きになったというのもあったんだと思います。父がバンドやロックが好きな人なので、最初に聴いたアルバムはTHE BLUE HEARTS。その後、いろいろな音楽に出会っていきました。家の近くのTSUTAYAにCDを借りに行ったり、パソコンに取り込んでiPodに入れる作業がすごく楽しかったです。
――じゃあ、新しい音楽と出会うための主な方法はレンタル?
キャ・ノン:はい。今ほど音楽の情報がなかったので、適当にTSUTAYAでCDを借りて、いろいろ聴くなかで好きなものを見つけていました。中学の時にすごく聴いてたのはYUIさんです。ELLEGARDENも好きで。ELLEGARDENは、雑貨屋さんで流れてるのを聴いて、すごくいい曲だなと思ったんです。今みたいに曲を調べられるアプリがなかったので、歌詞を聴き取って検索して、ELLEGARDENにたどり着きました。
――日本語の歌詞の曲だったんですか?
キャ・ノン:はい、「虹」です。英語じゃなくてよかった(笑)。
――(笑)。アイドルの音楽は聴いていましたか。
キャ・ノン:ももクロ(ももいろクローバー/ももいろクローバーZ)さんは、ずっと聴いていましたね。チームしゃちほこさん、エビ中(私立恵比寿中学)さんも好きで聴いてました。
――本も読むようになったと先ほどおっしゃっていましたが、どんな小説が好きでしたか?
キャ・ノン:金原ひとみさん、本谷有希子さんの小説が好きで、授業中に読んでるのが見つかって、よく取り上げられてました(笑)。当時はあんまり思ってなかったですけど、いろいろな作品に触れるのが好きだったのかもしれないですね。
――WACKに所属する前から、アイドル活動に充実感はありましたか?
キャ・ノン:そうですね。最初にいたグループで一緒だったメンバーがほかのグループに加入することになって、そのちょっと前に「今後アイドルをやっていくのか、女優をやっていくのかを選んで」と言われた時に、私はアイドルを選んだんですよ。アイドルと女優、どっちをやっていきたいのか、当時はあんまりちゃんと考えてなくて。親には「今しかできないことといえばアイドルだから、アイドルをやったらいんじゃない?」とも言われていたので、「わかった、じゃあそうする」という感じだったんです。
――アイドルを選んだけれど、所属していたグループの活動が終わってしまったんですね。
キャ・ノン:はい。期間限定のグループだったので活動が終わることは決まっていました。ほかのグループへの加入メンバーに選ばれなかったのは、向いてないということだと思っちゃって、「アイドルを選ぶのやめとけばよかった」って。でも、その後もアイドルを続けていって、楽しいお仕事だなと思ってました。