「主役は完全にユーザー」もふくちゃんが語るアイドルの生存戦略 一過性で終わらせない“帰る土台”の重要性

7月31日から8月2日の3日間にわたって開催される、国内最大級のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL 2026 supported by にしたんクリニック』(以下、『TIF』)。リアルサウンドでは『TIF』の開催に合わせて、令和のアイドルシーンを支えるプロデューサーやスタッフ陣をフィーチャーした全4回の特集を展開中。
第3弾は、でんぱ組.incや虹のコンキスタドール、ミームトーキョー、きゅるりんってしてみてらを手がける音楽プロデューサーの“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子が登場。初回から毎年『TIF』に担当グループを送り出しているプロデューサーから見た『TIF』の変遷や昨今のアイドルシーンの変化について、そして、今注目しているグループやアイドルシーン、“推し活の未来”についての展望を聞いた。(ATSUSHI OINUMA)
コロナ後のアイドルシーン、ユーザー主導の時代に求められる戦略と本質
――早速、今回の本題である『TIF』のお話から入りたいのですが、初期の頃の『TIF』にはどのような印象を持っていましたか?
もふくちゃん:実はでんぱ組.incは第1回から出ているんですが、最初の頃は本当にカオスでとんでもないイベントでした(笑)。でも、その時期を経てとても大規模なイベントになったなとしみじみ感じています。始まった当初は“一部のオタクだけの楽しみ”という感じでしたが、「『TIF』に出たい」、「『TIF』(に出ること)が夢だ」というアイドルが現れて、観る側もライト層まで参加するようになりましたし、何よりもあれからここまでアイドル運営が増えたことに一番驚いています。
――長い『TIF』の歴史の中で、特に大きな変化や盛り上がりを感じたタイミングはいつ頃でしょうか?
もふくちゃん:やっぱり「アイドル戦国時代」と言われていた頃、ももクロちゃんとかが出ていた時代の『TIF』の盛り上がりはすごかったですよね。『TIF』で爪痕を残す、あるいは伝説のステージを見せるなど、参加したアイドルが次々と話題になっていた頃が印象的です。
――特にここ数年での変化はどのように感じていますか?
もふくちゃん:良くも悪くも昔はアイドルとアイドル好きな人のためのイベントだったのが、最近は成熟してきて、各事務所の皆さんが「『TIF』に誰を出したい」、「『TIF』に向けてこういうグループを作ろう」といった感じでビジネスの現場になってきたような気がしています。
――そのように変化してきた今の『TIF』に対して、プロデューサーとしてはどのように向き合っているのでしょうか?
もふくちゃん:ここ数年、『TIF』は完全に新規向けの現場といった感じで割り切って勝負するようになりましたね。タイムテーブルから、自分たちの立ち位置や求められていることを感じ取って、どう振る舞えばいいのかを戦略的に考えるようになってきました。

――アイドルカルチャー、アイドルシーン全体の変化はどのように見ていますか?
もふくちゃん:とにかくコロナ禍がこの業界にもたらした影響が大きかったなと思っています。「無観客の配信で何ができるのか?」と色々試行錯誤していた頃が思い出深いです。コロナが明けてからは、戦い方がガラッと変わった気がしています。かつては対バンライブなどで勝負していって、ライブが強いアイドルが満を持して『TIF』で見つかるといった順番だったのが、今はTikTokやSNSで発見したアイドルを『TIF』に観に行く、という順番に変わったことが大きな変化だなと思います。まさに今、『TIF』に向けてショート動画でアピールを始めるグループが増えてくる頃だと思うんですけど、このような流れの変化はコロナ禍が大きなきっかけだったなと。
――“かわいい”に振り切ったグループが増えたこと、女性ファンが増えたことも昨今の変化や傾向かなと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか?
もふくちゃん:そうですね……アイドルとの距離感もいい意味で変わってきましたよね。人々の自意識が変わってきたことにより、音楽との接し方まで変わってきた気がしていて。昔は、自分とは距離の遠い存在として、音楽をBGMとして聴いていたものが、今の世代の子たちは音楽を使って“自己表現”するようになってきました。自分を鼓舞したり、自分がより可愛く映るための音源を探したりしているので、主役は完全にユーザーなんだなと思っています。以前は作り手側が「好きなクリエイティブを見てください、聴いてください」と与える側だったのが、今はむしろユーザーの好みを調査して、ユーザーにとって使いやすい音楽を提示しないといけない時代に変わってきたと思っています。
――そのお話の流れで言いますと、近年の“バズ”という現象も当然狙いにいっているということですね?
もふくちゃん:そうですね。「この音源で遊んでください」、「この音源はあなたの生活においてこんな風に使えますよ」といった形でマーケティングをして、プレゼンテーションしていかなくちゃいけない。ただ好きな音楽をやっているだけでは絶対に届かないので、大変な時代になったなと思います。今の若者は自分を表現できるもの、自分の生活の中でコスパよく使えるものを常に探している子たちが多いんだろうなと感じています。
――一方で、バズったとしても一過性のブームで終わってしまう可能性も秘めていると思います。バズった後の対応やバズのデメリットなどはどのようにお考えでしょうか?
もふくちゃん:当然ながら飽きられたり、ファン離れされたりすることも早いので、結局は昔と変わらず、中身が伴ってないといけないんですよね。バズで飛びついても、味がしなくなったと感じればユーザーはすぐに離れていくので、ロングスパンで味がする中身を用意した上で、バズを作らないと意味がないというか。両方を求められているんだと思います。たとえば、Juice=Juiceの「盛れ!ミ・アモーレ」のバズを見ていると、もともと土壌が硬い人たちはやっぱり強いなと感じます。ハロプロさんの場合は、コンサートを何十年とやり続けている宝塚(歌劇)のような強さと実力が伴っていますよね。我々の場合には、秋葉原で毎日ライブをやり続けているようなお店があるから大丈夫という安心感がありますし。「帰るべきところ」をどこに充てるのかということも大事だと思っているので、自分たちの強みや厚みとなる土台を持った上で、「バズったらラッキー」ぐらいの気持ちで構えておくのが本当は良いのかなと思っています。



















