『テレ東音楽祭』大森時生が語る演出の核心 過去と現在を等価に並べる独自の視点、名曲と“出会い直す”歌番組に

ノスタルジーを超えた過去の名曲との“出会い直し”
──番組では、『伝説ドラマ超名曲メドレー』も大きな反響を呼びました。あの企画はどのように生まれたのでしょうか。
大森:ドラマメドレーは、結構初期からやりたいと思っていました。というのも、自分にとってJ-POPと接続している数少ない部分がドラマだったんですよ。僕は学生時代に自我が変なかたちで肥大化しすぎていて、いわゆる売れているJ-POPをあまり聴いてこなかったところがあって。それでも、たとえば『花より男子』を観れば「Love so sweet」(嵐)の記憶があるし、『プロポーズ大作戦』には「小さな恋のうた」(MONGOL800)が紐づいている。『ごくせん』にはD-51やAqua Timezの記憶がある。当時はドラマがメディアの中心にあった時代で、主題歌が社会全体に広がる力も大きかった。だから、その頃の音楽と、そのドラマに出演していた俳優や映像が揃うことで、曲だけではなく、その時代の空気や自分自身の記憶まで一緒によみがえるんじゃないかと思ったんです。
──DOZAN11 aka 三木道三による『一生一緒にいてくれやチャレンジ』もインパクト大でした。
大森:僕、『24時間テレビ』って、さまざまな意見が出る番組ではあるとは思いつつ、あの大団円の感じはすごくいいなと毎回思うんです。そもそも走る必要のないマラソンを走って、ゴールして、みんなで「サライ」(加山雄三・谷村新司)を歌う。あれを観ると、「テレビってこういうものだよな」と思うんです。裏をかくとか、メタな視点を入れるのではなく、ベタをまっすぐやりきる。そこにメタ視点が存在しない感じ──粗品さんが言うところの「スカさない」という感覚なんだと思います。そう考えた時に、『テレ東音楽祭』でも大団円の空気を作れないかなと思いました。何かしらのチャレンジがあって、その先でみんなが知っている曲を一緒に歌う。さらに合唱という形がいいなと思ったんです。
──ZARDのライブメンバーが坂井泉水さんの歌声とともに演奏する企画も、アイデアとしては奇抜でありながら、とても惹きつけられるものがありました。
大森:ZARDさんは35周年ということもあって、事務所の方からランキングがあることや、直筆の歌詞があることを教えていただいたんです。であれば、それをしっかり見せたうえで、ライブメンバーが集結し、直筆歌詞とともに曲を届ける演出ができたらいいなと思いました。
──サンプリング的な発想ですよね。過去の素材を現在の文脈に置き直すことで、新しい意味が生まれる。
大森:そうですね。シティポップや中山美穂さん、80年代のアイドルの方々は、Night Tempoさんの文脈などでもサンプリングされてきたと思うんですけど、本田美奈子.さんは意外とその流れから取りこぼされているような印象があって。だからこそ、彼女でやりたいという気持ちがありました。結局のところ、ZARDさんも本田美奈子.さんも、まず曲そのものが圧倒的にいい。それが一番大きいですね。今回いろいろ聴いていく中で、改めて強くそう感じました。
──曲中に表示されるキャプションも印象的でした。
大森:いわゆるトリビアにとどまらず、視線を引きつけながら音楽との距離を縮める役割も果たせたらなと。目で見ても楽しめる情報があるといいなと思ったのがきっかけです。歌を邪魔するのではなく、アーティストや曲との距離を縮める“補助線”のような役割を持たせたかったんです。音だけでなく、目からも音楽に入っていける。それもテレビの歌番組ならではの面白さだと思っています。
タイミングは別のディレクターに任せていたんですけど、その人がアップになった時に出すとか、その情報を言われるならここが一番いい、というタイミングをかなり考えてくれていましたね。職人のこだわりを感じました。



















