つんく♂「10年愛されたら本物」 “商売”より“SHOW倍”を楽しむエンタメの真髄、2026年のアイドル論

7月31日から8月2日の3日間にわたって開催される、国内最大級のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL 2026 supported by にしたんクリニック』(以下、『TIF』)。リアルサウンドでは『TIF』の開催に合わせて、令和のアイドルシーンを支えるプロデューサーやスタッフ陣をフィーチャーした全4回の特集を展開中。
特集の最後を締めくくるのは、自身のアーティスト活動を経て、ハロー!プロジェクトをはじめとする数々のグループを育成し、今なおシーンに多大な影響を与え続けるレジェンド・つんく♂だ。平成の黄金期から2026年の現在まで、長年シーンの変遷を見守り続けてきた彼が、フェス文化の意義から現代の“推し活ブーム”への率直な所感、激変するSNS環境の中で長く愛されるアイドルの“本質”、次世代へ託したいエンターテインメントの真髄まで、プロデューサーの鋭い審美眼から紐解くテキストインタビューをお届けする。(編集部)
フェスがもたらす新たな出会いと新規獲得の重要性
ーーつんく♂さんは、『TOKYO IDOL FESTIVAL』という多種多様なアイドルが集まる巨大イベントをどのように見つめておられますか? その印象をお聞かせください。
つんく♂:本当の“多種多様”を出演させるには限界もあるでしょう。『TIF』は無名でも実力があったり、名前は有名だけど、実際のライブを観たことがない、っていうような人に実力を見せつけたりする場所としていろんなチャンスは待っていると思います。なんにしてもアイドルファンたちがワクワクする場所であってほしいし、新しい発見(出会い)が2、3つある場所であってほしいです。
ーーこのような垣根のないイベントが存在することで、アイドルのエコシステム(新陳代謝や市場の拡大、表現の切磋琢磨)にどのようなプラスの影響があると感じますか? フェス文化がもたらすシーンの広がりについてどのように考えているか教えてください。
つんく♂:「垣根のない」という設定の定義はどういうところなのかって話はさておき、アイドル市場ってエコシステムとかを語るより、既存のファンの満足度も大事だし、新規がいかに興味を持つかってことが実はめちゃ大事なわけです。アニメやゲームと一緒で、市場はすでにあるとは思います。そのなかで固定ファンだけでも商売は成り立つでしょうが、もっともっと新規をどうやって取り入れるか、敷居をいかに下げるか、これが一番のポイントだと感じています。「垣根がない」という「垣根」があると感じてるアイドルがいるなら、それを打破すべきですね。
ーーつんく♂さんから見た現在のアイドルシーンについてお伺いしたいです。平成の黄金期から2026年の現在に至るまで、アイドルの見せ方やファンの熱狂の仕方は大きく変化しました。この変遷について、プロデューサーとして肌で感じることはありますか?
つんく♂:テレビや雑誌にパワーがなくなり、YouTubeでアイドルが覗けるようになったので、「俺の」「私の」的なアイドル文化が最初は楽しかったのですが、だんだん飽和状態になり、何を見て良いのか、何がこれから流行るのか、全然わからなくなってしまいました。そんな中で魅力の標的(まと)を絞ってるアイドルが人気を得るようになりました。僕らクリエイターは今までのように「良いものをつくってればええんでしょ」だけではヒットが生み出せないというジレンマとの戦いであることは確かです。
ーー“推し活”という言葉が浸透したことで変化を感じることはありますか? たとえば、女性アイドルを推す女性ファンが増えている/アイドルファンを公言しやすくなっている、など。
つんく♂:「ヲタ」や「オタク」という言葉よりは“推し活”って言葉の方が安心感はあるんだろうか、とは思います。コロナもあって、リアルな恋愛が「悪いこと」に感じたりもするような、そんな時期を経ての2026年。女性のエネルギー(明日への活力)がアイドルやアニメやゲームキャラに寄ってるのも、経済的効果としては日本の市場に良い影響もあるでしょう。僕が心配というか、「おいどうした!?」って思うのは、本来一番刺激されなきゃいけない、DK(男子校生)のエネルギー市場にあんまり反映されてないのではないだろうか。そんな風に心配してしまいます。「男子、女子」でものを言うようなご時世でもないんでしょうが、僕自身を振り返ると、異性に興味を持つ思春期に、リアルは初恋要素と、アイドルに興味を持つ要素の二つを並行して心の中に持つことで、もっと大人になった時に心のバランスを保つことに役立ったように思います。DKたちがもっと参戦しやすくなるような「アイドル」や「象徴」が存在しなければ日本が寂しくなるんだろうな〜って感じています。
ーー木村ミサさん、指原莉乃さんという2人の女性プロデューサーのプロデュース術をどのように見られていますか? また、お二人がアイドルシーンにもたらした変化や影響などをどうお考えか教えていただけたら幸いです。
つんく♂:先ほどの話にも通じますが、「教育」や「レッスン」という現場も、昔のように「しごき」「スパルタ」とまで激しくないにしても、「教育」「指導」の過程には、「ハラスメント」というセンシティブな壁がやってきます。僕はアイドルやロックも同じで、常にこのビジネスは「プロのアスリート」なんだという考えを持っています。本人が「本当に上り詰めたい」と思っていなければ、他人がどんなスパルタ教育をしようが、登っていけないように思うんです。
愛を持った「指導」「教育」だとしても、この先、どういう評価に至るかわからない面で同性プロデューサーというのは何かとポイントは高いと思います。特に指原氏、木村氏においては単なる女性プロデューサーとは違って、本人たちも現役上がりという、ひとつ乗っかった立ち位置スタートなので、なかなか他者が簡単に真似できるものではない。ただ、最終的には「作品」であったり、「個」の評価でもあるので、5年後には、その差(男女の差)もなくなるとは感じています。
ーー近年、ハロプロ勢の実力が改めて各所で評価され、シーンを賑わせています。この現状をつんく♂さんはどう分析し、評価されていますか。
つんく♂:ざっくり3年周期で軸が変わっていくのが、この業界。モーニング娘。であっても「LOVEマシーン」が売れた3年後には違うベクトルの音楽やパフォーマンスを世に出さないと飽きられます。松浦亜弥やミニモニ。に全ハロプロをシャッフルしたいろんなユニットで飽きないように仕掛けたわけだし、その後にはAKBグループが世に出て、その後は坂道グループへ移行し、色を変えていく。2020年ごろには流石に飽和状態ではあったが、その中で色のはっきりとしたFRUITS ZIPPERなど、角(かど)のはっきりしたグループが登場し、時代の色がまた変わった。今、また新しい色が求められてる間(はざま)にあるとは思います。実力以上の魅力あるグループが頭角を表すと思うので、近い将来、「圧倒的な実力」=「人気(HIT)」なのかどうか、その辺が見えてくるのではないでしょうか?



















