つんく♂「10年愛されたら本物」 “商売”より“SHOW倍”を楽しむエンタメの真髄、2026年のアイドル論

つんく♂が語る2026年のアイドル論

バズの時代を生き抜く、“10年愛される”本物の輝き

ーーSNSでのバズやキャラクターの記号化が進む現代において、本当に長く愛され、人の心を打つアイドルであるために最も必要な素養=本質とはなんだと思われますか?

つんく♂:誰もが「みーつけた!」って言いたいもので、バズや流行りのキャラってのは、昔から何度も繰り返される。日本人って「新しいのも好き」な面と「昔ながら」にリスペクトの念を抱く両方を持ち合わせています。読売巨人軍も阪神タイガースも大好きだし、でも、サッカーも好き。モーニング娘。という看板が長く愛されていることもそうだし、『リズム天国』というキャラをこうやって長らく応援してくれることに、逆に制作側も、ファンに対してすごく尊敬の念を持つ。

 その反面、タピオカや麻辣湯のように、新しいものにも飛びつく、瞬発力にも敬意を抱かざるを得ない。ただ、芸能界でも世間のキャラでも、一瞬バズったとしても10年愛されたら本物だし、ファンを裏切らない限り愛され続けるはず。昔はテレビの世界が「一発屋」として、はいて捨てた芸人やギャグも真に興味深いものは廃れず今もリスペクトされている。テレビの力が弱ってから、さらに日本人にはそういう「奥深い目」を持っているということがはっきりしたように思う。逆にSNSでバズったものの方が長期戦にどれくらい持ち込めるのかが、今後見極めるべき点だと思う。

ーー自身が手掛けてきた中で、時代を経ても変わらず大切にしているプロデュースの軸について教えてください。

つんく♂:僕なんて、昔ながらのやり方しかわからないので、音楽の作り方も昭和だし、頭の回路も昭和なんで、今の音楽家たちとの会話がなかなか成り立たず、時代のせいにもしたくなります。しかし、我が子らも戦後のアメリカンポップスから(エルヴィス・)プレスリー、The Beatles、マイケル・ジャクソンやEarth, Wind & Fireも聴くし、ビルボードの最新ヒット曲も当然聴く。J-POPでいうと、昭和のシティポップからアニソン、最近のアイドルも聴いています。同じように分け隔てもなくK-POPも聴いていますしね。あの子たちの聴く耳の基準もよくわかりませんが、良いものは楽しい、歌いたい、踊りたいって思っているようです。なので、僕はバズとかなんとか、細かいことは気にせず、自分の青春時代に頭でとらえた、あのドキドキを今に置き換えて、作ってゆく。それしかできないですね。

ーー今のアイドルたちが置かれている環境(SNS、ショート動画など)を、当時と比べてどう見られていますか? 

つんく♂:昔のアイドルは基本的には給料制で、活動においては全てが事務所管理でした。シングルのリリースが年に三枚。ファンからすれば、毎月のアイドル雑誌からの情報と、ファンクラブに入って3カ月に一回届く会報誌からの情報がアイドルを知る全てでした。そうやって最低でも1年は応援してたように思います。

 昨今は、漁るのも1〜2日の間で一気なので、すぐお腹いっぱいになるし、1週間後には違う推しができてるというような時代です。しかも、情報を流す方も事務所管理でなく、本人の節度のもとに成り立ってるものも多いです。なので、炎上も起こりやすい。けど、アイドル本人はすぐ手応え(リアクション)も感じるし、本人取り分も歩合などではっきりする分、やる気も出るのかなとは思います。プロに徹するという意味では、昔の方がやりやすかったんでしょうね。

ーーつんく♂さんが想像する「こんなアイドルシーンになったら面白い」という未来への期待や想いをお聞かせください。

つんく♂:これが予想できたら億万長者なわけですが、それが難しい。ですが、僕は答えを知っています。前提として、ひとつ思うのが、日本人が作るものは本当に芸が細かく、丁寧で鋭いものが多い。その割に「日本語」という言語の壁、いや、「英語が怖い日本人」にとって世界への壁が高すぎる、そう感じます。日本のアイドルが日本語のままで世界の市場に飛び出せるように制作サイドも世界を意識した市場戦略が必要だなって思います。

 結論は、ダイソーや3COINSのようなアイドルファミリーを作った人が世界を制します。誰か一緒に市場にチャレンジしませんか?

ーー最後に、次世代のプロデューサーやクリエイターに伝えたいこともお伺いできたら幸いです。

つんく♂:「商売」より「SHOW倍」。ファン(ヲタ)ありきの、メンバーも制作側も幕が開いて閉じるまでのエンターテイメントを楽しむ毎日でなければ、単なる消耗戦になる。落語も伝統芸もそうですが、百回千回と同じネタを見せられてもやっぱ見るたびに「すごい!」って思うのが、本当の芸術。演じる側も自分に飽きるようでは、何にも追求できてない、そう思います。サッカーのゴールもフィギュアスケートの演技も1万回の稽古の集大成が本番の1回なので、とにかく反復練習。それを楽しめない演者、制作人は単なる「ハプニングネタ」って言われても仕方ないのかなって、そう感じます。

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