米津玄師×『チェンソーマン』、King Gnu×『呪術廻戦』、SiM×『進撃の巨人』…...MAPPAの映像と音楽が生み出す化学反応
2026年6月に設立15周年を迎えたアニメーションスタジオ・MAPPA。今やコアなアニメ視聴者のみならず、アニメやサブカルチャーを日常的に楽しむライト層もその名を目にしたことがあるだろう。『呪術廻戦』、『チェンソーマン』、『進撃の巨人』や『忘却バッテリー』、『地獄楽』に『らんま1/2』、つい先日の『MAPPA 15周年記念 ラインナップ発表会』で情報解禁となった『地元最高!』、さらに少し時代を遡れば『この世界の片隅に』、『ユーリ!!! on ICE』、『BANANA FISH』など、バラエティ豊かな作品の中には、主題歌との相乗効果で爆発的に名の広まった作品や、現象化を巻き起こした作品も複数ある。そこで今回は、MAPPAの描くアニメーションと、その物語を彩る音楽の関係性に着目。迫力ある映像美と楽曲の融合が生み出す化学反応を改めて振り返ってみたいと思う。
米津玄師×『チェンソーマン』、オマージュを用いたリンク性
最初に触れるべきは、やはり世界規模でアニメ/主題歌ともにその名が広まったTVアニメ『チェンソーマン』だろう。昨年から今年にかけて巻き起こった劇場版『チェンソーマン レゼ篇』と主題歌、米津玄師「IRIS OUT」の世界規模のヒットは周知の通り。その席巻を語る上で、やはりアニメシリーズの幕開けを飾った主題歌「KICK BACK」を無視するわけにはいかない。楽曲単体での輝かしい国内チャート成績に加え、日本語詞楽曲として史上初のアメリカレコード協会(RIAA)からのゴールド認定も受けた今作。その背景にあるのは、従来より原作が持っていた根強い海外支持、そして何より米津自身の原作に対する深く大きなリスペクトだ。楽曲が使われたアニメのオープニング映像は、長年MAPPAの強みのひとつである迫力のバトルシーンに加え、原作者・藤本タツキのルーツを色濃く反映した映画のオマージュが数多盛り込まれた点も大きな話題になった。「KICK BACK」にもモーニング娘。の「そうだ!We’re ALIVE」のパロディが含まれていることから、図らずしも主題歌と映像がそれぞれに引用の手法を用いたというリンク性も興味深く、その点も両者の親和性を高めたポイントだったのかもしれない。
King Gnu×『呪術廻戦』、重苦しいバトル展開を際立たせる映像と音楽
『チェンソーマン』と同様に、作品とアーティストの度重なるタッグが人気の拡散へと繋がったMAPPA作品がほかにもある。TVアニメ『呪術廻戦』とKing Gnuだ。『劇場版 呪術廻戦 0』主題歌「一途」とEDテーマ「逆夢」を経て、最たる激動の局面を迎えるアニメ第2期『渋谷事変』で再び主題歌を担当したKing Gnu。楽曲「SPECIALZ」を使用したノンクレジットオープニング映像は2026年7月6日時点でYouTube再生回数1.6億回を突破し、アニメ放送から2年を経てもなお、まだその人気を世界中へ拡大し続けている。『呪術廻戦』のさまざまな要素が曲中に散りばめられていることでも話題となった「SPECIALZ」だが、音楽と併せて描かれたオープニング映像も非常に強烈な個性を放っている。従来のアニメオープニングに見られるようなポップさやキャッチーさは一切排除され、映像はミドルテンポの楽曲のリズムに合わせ、赤と黒を基調とした重苦しくおどろおどろしいカットで構成。爽やかな青を印象づけた前シリーズ『懐玉・玉折』編とのコントラストも印象的で、アニメ『呪術廻戦』をシリーズで追っていた視聴者にとっても大きなインパクトを与えた化学反応だったのではないだろうか。
SiM×『進撃の巨人』、楽曲とアニメーションがリンクした見応えある映像
このようにMAPPA作品の特徴のひとつに“映像の重厚感”がある。制作会社としてはこれまで多彩な作風を取り扱っているものの、過激で迫力あるバトルシーンや、死の匂い漂うシリアスなムードの作品に対してMAPPAの魅力を見出す人も少なくない。そんなMAPPAの真髄として語られる作品のひとつが『進撃の巨人 The Final Season』だ。物語の前提が根底から覆るエピソード「マーレ編」を描いた本シリーズは、WIT STUDIOからMAPPAが制作を引き継いで物語の結末までを描き切った点もトピックのひとつ。そんな本シリーズの主題歌となったのがSiM「The Rumbling」だった。巨人の咆哮を彷彿とさせる獰猛なデスボイスと、サビの抒情的かつ解放感のあるスクリーモらしい曲調によって、『進撃の巨人』が描く絶望感と終末的な世界観を見事に表現したこの楽曲。振幅の大きな曲展開に呼応するように、アニメーションの動きが随所でリンクするオープニング映像も非常に見応えがあり、その完成度の高さから、日本国内のみならず海外からも高い評価を受けている。
MAPPA15周年を彩るPEOPLE 1「生活」
本稿では最後に、スタジオの原点が描かれた15周年アニバーサリーソングであるPEOPLE 1「生活」についても触れておきたい。先述した三作とは打って変わって、写実的かつ繊細な体温を感じさせる映像とともに展開された本作。ムービーの序盤では穏やかな曲調にあわせ、アニメーション制作という“手作業”や、作り手一人ひとりの“生活”を彷彿とさせるカットが続く。彼ら作り手によって生み出された夢と希望溢れる煌びやかなアニメ映像が、中盤から終盤に展開される構成となっている。これからもアニメというクリエティブが、多くの人々の生活や日常に彩りを与える存在となるように――。そんな願いが込められたようなアニバーサリームービーもMAPPAだからこその仕上がりと言っていい。
サブカルチャーとして形容されていた数十年前に比べ、今や立派な大衆カルチャーのひとつとなったアニメ。そして作品を彩る音楽もまた、アニメの魅力や世界観を広げる重要な存在となっている。映像と音楽が互いの魅力を引き出し合うことで生まれる没入感や感動は、今後も多くの人を魅了し、日本が誇る文化として、世界中へ届いていくのだろう。