嵐がラストシングル「Five」を“形”で残した意味とは フォトブック、愛情の47分間――5人らしく届けた感謝
嵐が“伝説”と呼びたくなる東京ドーム公演を行った5月31日、我が家にはそれが届いた。最新曲「Five」のCDシングルだ。この日に、このアイテムが届くということ。それは、単なる“予約商品の到着”では片付けられないものだった。
家族の節目を記念するフォトアルバムのような「Five」
「Five」は、もともと3月4日にデジタルシングルとして配信リリースされていた楽曲だ。それでも、あえてCDシングルという“形”で残したかった。データで聴くことはできても、やはり手元に置き、触れ、ページをめくりながら感じたいものがある。CDという作品には、楽曲をとどめておく以上の何かが宿ると思う。特に今作については、嵐という存在が確かにここにいたという実感に近い何かだ。
STARTO ENTERTAINMENTの公式ショップである「ファミクラストア オンライン」限定販売とされ、一般のCDショップ店頭には並ばなかった今回のシングル。しかし、ファンクラブ会員以外でも予約できる対応が取られていた。その姿勢には、「できるだけ多くの人へ感謝を届けたい」という、彼ららしい思いがにじんでいたように感じる。
嵐の“ファン”は、それを自覚してファンクラブに入っている会員にとどまらない。むしろ、自分が「ファンだったのだ」と、この大きな節目を前にあらためて気づいた人も少なくないだろう。テレビをつければいつでも5人がそこにいて、バラエティ番組で笑いを届けてくれた。ドラマや映画で心を動かされ、街を歩けば彼らのヒット曲が流れる日常。そのイントロを聴くだけで、一気に当時へ引き戻される。そんな思い出の刻まれた曲が、嵐には数多くある。この26年半、多くの人が彼らの存在を当たり前のように感じながら生きてきたのだ。
だからこそ、このCDシングルから受ける印象は、“グループ活動の一区切り”というより、もっと近しい存在の“門出”に近い。それは卒業アルバムのようでもあり、家族の節目を記念するフォトアルバムのようでもあるのだ。
5人と過ごす時間、そして愛情の47分間
同封されたフォトブックに収められている写真たちを見ると、作り込まれていない自然体な姿が印象的だ。何気ない笑顔や、少し気の抜けた表情、メンバーに向けられた眼差し……その一つひとつがあまりにも“嵐”の空気で、その向こう側に長い時間をともに過ごしてきた彼らの歩みが透けて見えるようだ。
ページをめくっていると、不思議と彼らの話し声まで聞こえてくるような感覚になる。そして、今回のシングルが“幸せな作品”だと強烈に感じたのは、その「聞こえてきそう」という感覚だけでは終わらせないところだ。Blu-ray/DVDには約47分におよぶメイキング映像が収められている。そこには、できる限りありのままの5人を残そうという制作側の愛情が詰まっていた。
おそらく「ここはカットできない」「ここも残したい」という思いを積み重ねた結果が、47分という長さだったのではないだろうか。5人と過ごす時間を心に刻みつけたい。そう願うカメラ、編集、スタッフ、そして視聴する全ての人の気持ちが繋がっているような感覚を覚えた。
およそ5年ぶりとなるレコーディングにMV撮影。「どんなふうに歌ってたっけ」「どんなテンションでMVを撮ってたんだっけ?」と彼らは冗談めかして話す。しかし、そのブランクを感じさせないほど、一瞬で5人が“嵐”になる姿そのものに胸を打たれる。技術や経験というよりも、長年ともに過ごしてきた時間そのものが、彼らの身体に染みついている。まさに血肉なのだと思う。
嵐から受け取った宝物を胸に歩む未来
松本潤がスタッフと打ち合わせを重ねる。そこに櫻井翔がアイデアを出す。相葉雅紀が好奇心旺盛に動き、大野智が寄せられる期待に応えるパフォーマンスを披露し、二宮和也がそんな“嵐”の空気を「こういうことしてたな」と味わうように見つめる。誰かが「こうして」と演出したわけではない。自然と出来上がった彼らのキャラクターと役割。真似をしようとしても生まれない、奇跡のようなバランス。それが見られるのは、やはり5人が揃っているときなのだ。
その奇跡とも言える特別な関係性に、二度と戻らない景色なのだという寂しさと同時に、そのきらめく時間を共有してこられた感謝が強く残る。
もちろん、人によってはまだまだ時間が必要だということもあるだろうが、6月に入って、この作品を見返すときの感情は不思議と悲しみばかりではないことに気づく。5人の新しいこれからと、ファン一人ひとりのこれから、そしてこの時代のこれからへ向かって、みんなが前へ進んでいくのだという、どこか切なくも爽やかな感覚だ。
「Five」のMVに映る、5人で力を込めてバスを動かす姿は、2020年で活動休止を迎えた“嵐”という存在を、もう一度動かした彼ら自身のようにも見えた。そして、その結果として、私たちは再びたくさんの笑顔を受け取ることができた。
ファンが直接パフォーマンスを見届けられるツアーが開催されたこと。「Five」という5人しか歌えない楽曲が生まれたこと。CDという形あるものに愛しい瞬間が留められたこと。そして、その宝物たちをもう一度ゆっくり振り返りながら、一つひとつ丁寧に胸のなかへしまっていく時間をもらえたこと――。
きっとこれから先も、私たちは時折その景色を見返しながら、自然と口ずさんでいくのだろう。〈忘れないでいよう〉と。26年半、嵐とともに確かにあった、この温かさを。